2016.11.23 NIGHTMARE LIVE 2016“NOT THE END”@東京体育館
2016.12.02

今年4月に、年内をもって活動を一時休止することを発表したNIGHTMARE。2000年の結成以来16年走り続けてきた5人は、ひとときの眠りに入る前の春・夏・秋、様々な活動を展開してきた。そして迎えた活動休止前のラストツアー“NOT THE END”ファイナル公演。本人たちにとってはもちろん、ファンにとっても大きな意味を持つライヴになることは間違いないからこそ、開始前から場内は期待感に溢れた熱気に包まれていた──。それから約3時間に渡る出来事をレポートする。


NIGHTMAREは16年もの間第一線で活躍してきたバンドだ。その間、多数の作品をリリースをしたからこそ、ファンにはそれぞれ、思い出の曲や自分の人生において大切な曲が存在するはず。限られた時間の中で今日はどれだけの曲が聴けるだろう。そんな意味でも、1曲目にどの曲が選ばれるのかは誰もが注目していたと思う。SEが流れるほの暗いステージにメンバーが現れ、上手に2本のトーチが灯り、演奏されたのは「クロニクル」。途中、トーチの数が7本に増えたとはいえ、ステージ上のメンバーの表情はほとんど見えない。視覚に頼れないからこそ聴覚が研ぎ澄まされ、YOMIの歌と演奏に集中力がいく。この広い会場を、静寂の中でひとつに統一するバンドの思い切りに少し驚きを覚えた。実は筆者は、NIGHTMAREのライヴを観るのがかなり久しぶりだった。過去にイベントで観て以来となるのがこんな大切な節目の日であることに、正直、引け目を感じていた。でも、そんな気持ちはオープニングの10分足らずで吹き飛ばされてしまう。長い歴史を知った上でライヴを見届けることも、先入観なしに一遍のライヴとして楽しむことも、どちらも間違いではない。「クロニクル」と「Awakening.」、派手な演出もパフォーマンスもないこの2曲を目の当たりにし、誰がどんな想いを持ってステージに向き合ってもステージ上の5人はきっと受け止めてくれるだろうと思ってしまったのだ。そんな考えが見透かされていたのか…最初のMCでYOMIは、“今日はありったけの愛を俺たちにぶつけて来いよ! 俺たちが全部受け止めてやるから全員で来い!”と絶叫。活動休止を決めたひとつの理由にYOMIの機能性発声障害があり、歌ったり大声で叫んだりすることは大きな負担になるのではと思う。しかし、そんなことは関係ないとでもいうように、大きな声でバンドの想いを代弁し、次々と繰り出される曲に声を乗せていく。静かにスタートしたライヴも、曲が進むにつれ様々な顔を見せるようになる。咲人が作詞・作曲をした「ネオテニー」では、強い意志を感じるメッセージをメロディアスな旋律に乗せてオーディエンスを包み込み、「東京傷年」や「ジャイアニズム痛」といったヘヴィなナンバーで客席をヘドバンの渦に巻き込んだりしながらライヴは進む。




2度目のMCでYOMIは、1回目のMCに続いて、今一度ファンへのメッセージを口にした。“今日はたくさんのファンのみんなに集まってもらっています。いつも来てくれているファン。(生中継をしている)WOWOWで観てくれているファン。そして、仕事で来れなかった人にも今日は俺たちの気持ちが届けられたらと思っています。この調子で突き抜けていくぞー!”その言葉通り、上下の2階スタンド席に続く花道を、柩・咲人・Ni~yaの弦楽器隊が縦横無尽に走り回ったりと、ステージの広さを感じさせない動きをメンバーは見せる。ドラムのRUKAは、ポジション的にもキャラクター的にも、4人とまったく絡むことなくひたすら淡々とドラムを叩くが、彼がボトムをしっかりと支えているからこそメンバーは自由に動き回れる。さすが16年も第一線を走り続けてきただけあり、若いバンドには絶対に出すことのできない呼吸感と絶妙なバランスに畏れ入る。バランスといえば、ステージ上でそれぞれ違った個性を出すメンバー間のそれだけではなく、楽曲の並びについてもいえる。ここまで、最新曲の「Awakening.」から10年以上前の曲までを織り交ぜて披露しているが、古さも新しさも感じさせない。これはスゴイことだ。長年活動を続けていると、途中で昔作った曲を敬遠してしまうことも少なくはないが、彼らに関してはそういう意識がまるでないのだろう。これまでずっとそういうスタンスでライヴ活動を続けてきたからこそ、ファンも、どんな時代の曲でも歓声を上げながら受け入れ、その曲に合わせたノリ方でライヴを楽しんでいる。「終わる世界の始まりは奇なり」で、ふっと上の方を見ている咲人の姿がスクリーンに映し出されたが、メンバーには、1万人近い観客が集まったこの日の光景はどう映っているのだろう。
中盤は、SEを挟みながら、聴かせるナンバーを集めたパートと激しさを孕んだ楽曲を連発するパートに住み分けをしながら進むが、ここでさらに、NIGHTMAREの懐の深さを見せ付けられることに──。打ち込みのリズムと咲人のカッティングで始まった「BOYS BE SUSPICIOUS」では、咲人のウィスパーラップを受ける形でYOMIがヴォーカルを取るなど、メンバーの多才さあってこそのステージングが展開される。通路にも人が溢れんばかりに観客たちが踊り出したという「惰性ブギー」では、咲人のギターソロを聴き、彼が奏でる音色の豊かさに驚愕。優しい音色からヒネくれた音、ゴツゴツとしたサウンドまでを自在に繰り出す技量の高さは、まさに、このバンドの多才さを支えるひとつの要素だろう。そして、強烈な印象を覚えたのは、強い音がガツンと響いて終わった「ジェネラル」のあと、数秒の静けさを置いて始まった「まほら」。咲人と柩にピンスポットが当たり、ギターをつまびく音が段々と大きくなる中、RUKAが刻むリズムが場内に響く。スクリーンに映し出されるメンバーは白黒映像で…1曲目の「クロニクル」で感じたように、想像力をかきたてられるステージングに引き込まれる。そんなしっとりした雰囲気を「mimic」が打ち破り、YOMIは“オーイ!”と叫びながらステージを駆ける。「ジャイアニズム死」では、Ni~yaとRUKAのリズム隊が絶妙なコンビネーションの演奏を展開し、客席から大きな歓声を呼び起こす。ここまでまったく絡みのなかったRUKAとフロントの4人がドラム台の前で集って鳥肌ものの一体感を見せたのもこの曲のもう一つの見せ場。畳みかけるように4曲のハードチューンを連発し、「落羽」の演奏に入る前にYOMIがこんな言葉で客席の高揚を沈めた。“今日のライヴ、俺たちは絶対忘れないと思います。寂しくなったり辛い時があったら、今まで俺たちが作ってきた曲を聞いてください。絶対、助けてやります”。NIGHTMAREは、ファンに対して何か言いたいことがあってもすぐに茶化してしまうと聞いたことがある。本当は誰よりもピュアで熱い心を持っているのに、照れ臭さが勝ってしまい、好きな女の子をいじめてしまうガキ大将は、口や態度が悪くてもいざという時には頼りになる。まっすぐ客席を見つめてファンが一番欲しい言葉を真摯に投げかけるYOMIに、そんな、ガキ大将の姿が重なった。“真面目”という言葉を投げるとメンバーは否定するかもしれない。けれど、この日のライヴを観る限り、NIGHTMAREは音楽やファンに対してものすごく真面目で真摯なんじゃないかと思う。柔と剛でいえば “剛”。シャレたことができるわけじゃないけれど、やっていることに芯が通っているからこそ、浮き沈みの激しい音楽の世界でシーンをリードし、走り続けてこれたのだろう。
続く「落羽」では、ソロを弾く柩の肩をYOMIが抱き、そんなYOMIに柩がコテッと頭を預けるシーンも。壮大なイントロから始まる「VERMILION.」では、疾走感のあるメロディーに乗せてYOMIが歌い上げる刹那的な歌詞が心に響く。そして、“俺たちは今日まで、どこまでカッコイイバンドになれるのか、どこまで上に上れるか、それを確かめたくて16年間突っ走って来ました。辛かったこともたくさんあったけど、ここまでやって来れたのは、ファンのみんなが、スタッフたちが、いつも支えになってくれていたからだと思います。感謝の気持ちを込めて送ります”という曲紹介を経て、本編ラストの「Morpho」へ──。“行くあての無い旅に出るような日々”という言葉から始まるこの曲は、スクリーンに映し出される歌詞を目で追いながら聴いていると、目の前にいるバンドの幕が一旦閉じようとしている時だからこそとても意味深に感じられる。でも、これはただのセンチメンタルな感情ではないとも。傷ついた気持ちを抱えながらも、強い意思を持って生き抜こうとするメッセージが広い会場にしっかりとしみ込んで、本編は幕を閉じた。
アンコールは、楽器隊によるインストゥルメンタルナンバー「KENKA DRIVE」からスタート。90年代のバンドサウンドを彷彿させるドライブ感のある演奏から感じたのは歌心。ヴォーカル不在でしっかり聴かせて見せることができるバンドはそういない。ここに、体全部で魂を込めて歌うスタイルのYOMIの歌が乗るからこそ、互いが持つ個性と力が何倍ものパワーになるのだろう。そして、パーカーのフードを目深にかぶったYOMIが登場。メンバーコールを織り交ぜた「dogma」から「自傷(少年テロリスト)」では客席をこれでもかと煽り、しっとりと終わった本編の印象を打ち消すかのように場内のボルテージは最高潮に! YOMIはオーディエンスに向かい、「飛べ!」と煽りまくる。とはいえ、場内の熱量を盛り上げるのは、観客任せではない。本編を観て気づいたのは、YOMIは、“かかってこい!”“そんなもんか!?”といった、多くのヴォーカリストがオーディエンスを煽る時に使う言葉をほとんど使っていないこと。過剰に煽らずとも、メンバー5人の力にお客は自然と飲み込まれる。それを、大掛かりなセットや仕掛けを施さない1万人規模の会場でやりきってしまうバンド力には感服だ。
アンコールの3曲が終わったところで、YOMIがひとつの提案をしてくれた。それは、客席のファンのみんなと一緒に写真を撮ること。メンバーがセンターに集まり、アリーナをバックにパシャ。先ほどの破壊的な空気感がウソのように、和やかなムードが場内に広がる。この後、「トラヴェル」の演奏を挟み、メンバー全員がファンへの言葉を投げかけた。

YOMI:咲人くん、どうですか、今日は。
咲人:久々にいい景色を見させてもらってます! なんかね、今日を迎えたら悲しくなっちゃうかなと思ってたんだけど…なんだろう、すごく楽しいです。久々の景色だよね、今回。
YOMI:そうなんだよ! なんか若干ブランクがあるよね?
咲人:ブランクじゃなくてね。なんかね、“観に来てくれたんですか!”みたいな。
YOMI:ありがたいですね。
咲人:みなさんのおかげで気持ちいいです。ありがとう。
YOMI:(Ni~yaに向かって)どうですか、今日は。
Ni~ya:とにかく楽しいです。
YOMI:今日のNi~ya、超カッコイイよ!
咲人:っていうかさ、今日、Ni~yaのことばっかり褒めるじゃん。なんかあるんだろ。
YOMI:それじゃ、RUKAさん! (ドラム台に上がって…)久々に広い会場ですけど。
RUKA:おまえさ、座った俺と(立ってるくせに)身長変わらないんだけど。
YOMI:(抗議しながら)ちなみにここ(RUKAの前)にカメラあるから。かわいい顔してよ。
RUKA:(首を振って拒否)
YOI:それでは柩くん。どう?
柩:悪いわけないだろ。最高の上ってなんだよ?
お客さん:超最高!
柩:超最高だよ(笑)。全国廻ってきて、(みんなが)悲しそうだったりする顔を見て、トシなのかもしれないけど涙腺弱くてガンガンきてたわけよ。今日はステージで死んじゃうんじゃないかと思ったけど、今、結構うれしい。悲しいとかよりうれしい・楽しいのほうが大きくて。メンバーもみんなもスタッフも、帰ってくる場所があんじゃんって。ここに帰ってくればいいんじゃんって。すげーうれしい。
YOMI:俺も同じ気持ちです。
柩:いや~、ありがと。

ここから、ライヴの定番曲「極東乱心天国」と「Quints」に突入し、アンコールは終了。気づけば、もう、28曲もやっている。観客をコントロールしにくいアリーナという空間で、一度たりとも空気を緩ませることなく、アンコールまで演奏しきった5人の体力と気力に圧倒される。けれど、まだまだここで終わらない! 消えないアンコールの声に導かれ、5人が再び登場。“何年先になるかわからないけど、俺たちは絶対に帰って来ます。約束します。だからみんな、帰って来るまで待っててください!”という、YOMIの心強いメッセージを前置きに演奏されたのは、「Star[K]night」。ファンが手にしたオフィシャルグッズのLEDライトで客席が白く発光する中、オーディエンスがアカペラで大合唱する場面も──。そんな光景に身を任せているメンバーの表情は、感慨にふけっていたり目を潤ませていたりと様々。“もっと聴かせてくれ!”と叫ぶYOMIは幸せそうな表情をたたえ、耳に手を当ててオーディエンスの声を聴いているNi~yaは一緒に歌を口ずさむ。咲人は耳に手を当てながら目をつぶり、柩は潤んだ瞳で客席を見つめる。カメラが自分を捉えていると気付くと顔をそむけようとするRUKAも、遠巻きにスクリーンに映る姿を観ていると、なんともいえない表情でファンの歌を聴いているように見えた。そしてついに演奏が終わり、YOMIが手招きしてメンバー全員をステージ中央に集め、メンバー全員、そして客席のオーディエンス全員が手をつなぎ合ってジャンプ! RUKAがステージを去った後も、4人は名残惜しいのか、ステージを走り回ったり、YOMIをおんぶリレーしたりと、ライヴをやり終えた満足感が伝わってくるようなあたたかいムード。そして、YOMIがステージを去ったあと、残った3人からは再びメッセージが…。

Ni~ya:こんなバカヤロー5人組を応援してくれてありがとね。そして、これからもよろしくな。ありがとう、バイバイ。
咲人:16年聴いた中で一番キレイな歌声でした。“さよなら”と“またね”は違うから、笑顔でまた会える日を楽しみに待ってます。またなー!
柩:次、この景色を見られるのはいつになるかわからない。でも、今日、安心できたから。行ってきます。ありがとうございました!



万感の想いを込めたそれぞれの言葉は、しばしの沈黙に入るNIGHTMAREへの労りの言葉にも感じられ、最後にふさわしい感動的な幕引きの余韻に浸りながらレポートのノートを閉じ、私は会場を後にする準備を始めていた。
そんな時だった。公演の終わりを告げるアナウンスが場内に響く中、まだまだ諦めきれないオーディエンスが三たびのアンコールを求めて声を上げると…なんと、予定になかった3回目のアンコールに応えるためにメンバーがステージに帰還!さっきまで男泣きをしていたメンバーが繰り出したのは、「My name is“SCUM”」と「the FOOL」。「the FOOL」は掛け合いをなんと12回もやり、演奏するメンバーも必死の形相だ。最後の最後でステージと客席のガチンコ勝負を見せ、ライヴは本当の本当に終了。
楽器を置いたメンバーは、再び、抱き合ったりステージを走り回ったりと思い思いにライヴの余韻に浸る。ずっと無表情だったRUKAも、YOMIとハグ! 微笑ましいと思って観ていたら、なんとRUKAはYOMIの足を掴んでジャイアントスウィング!この技をかけられるのは初めてじゃないのだろうか、しっかりと受け身をとっているYOMIは、ポイと投げ捨てられてもへっちゃら。感動的なエンディングから一転、笑いありの終焉となり、なんだか楽しい気持ちで会場を後にした。駅に向かう道すがら、“「Star[K]night」で終わってたらしんみりしちゃってたと思うけど、最後に暴れられて、笑って終われたね!NIGHTMAREらしい終わり方だったね!”と話すファンの会話が聞こえてきた。咲人の言葉のように、“さよなら”と“またね”は違う。“また次”を感じさせる終わり方で3時間の長丁場を締めくくったメンバーには感謝の気持ちしかない。あんな唯一無二のライヴを見せられては、待っていないわけにはいかない。しばしのおやすみで十分に英気を養って、いつか必ず、超最高のさらに上の景色を見せてほしい。

Report:MAKIKO SUDA  Photography:susumu miyawaki


2016.11.23 NIGHTMARE LIVE 2016“NOT THE END”@東京体育館
-SET LIST-

01. クロニクル
02. Awakening.
03. Can you do it?
~MC~
04. ネオテニー
05. 東京傷年
06. ジャイアニズム痛
07. the WORLD
~MC~
08. ERRORs
09. BOYS BE SUSPICIOUS
10. 終わる世界の始まりは奇なり
11. 惰性ブギー
~SE~
12. ジェネラル
13. まほら
14. わすれな草
15. RAY OF LIGHT
~SE~
16. mimic
17. ジャイアニズム死
18. ジャイアニズム天
19. 極上脳震煉獄・弌式
~MC~
20. 落羽
21. VERMILION.
~MC~
22. Morpho
<ENCORE>
23. KENKA DRIVE
24. dogma
25. 自傷(少年テロリスト)
~MC~
26. トラヴェル
~MC~
27. 極東乱心天国
28. Quints

<ENCORE 2>
29. Star[K]night

<ENCORE 3>
30. My name is“SCUM”
31. the FOOL

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