2017.03.04 CREATURE CREATURE <Death Is A Flower 2017 : The Second Volume> @ 東京キネマ倶楽部
2017.04.07

良書を読むための条件は、悪書を読まないことである――ドイツの哲学者による有名な言葉だ。これは音楽についても当てはまる話だろう。限られた人生において、実りある作品といかに出会えるか。CREATURE CREATUREの新作『Death Is A Flower』に触れて、ふとそんな古の格言を思い出した。


CREATURE CREATUREとは、数多くの著名アーティストに影響を及ぼしてきた孤高のシンガー、DEAD ENDのMORRIEのソロ・プロジェクトである。彼のもとに集うのが、La’cryma ChristiのHiro、黒夢の人時、The Legendary Six NineのShinobu、CQのササブチヒロシという一目置かれるミュージシャンたちであることも、客観的にMORRIEという人物の求心力を物語る。

この5人が一体となって生み出される音塊は、類似するものを例示しにくい。大局的には“ロック”の範疇に収められるとはいえ、独特のコード使いと進行、フレージング、リズム、楽曲構成は、既存のフォーマットとは一線を画したものだ。そして何よりも、自身の歌による固有の表現力の可能性を追究するMORRIEの存在が、すべての根源となっている。
今回の東京キネマ倶楽部公演が行われたのは3月4日。MORRIEがこの世に生を受けた日であり、『Death Is A Flower』を先行販売するツアーの最終日として設定されていた。オープニングは同作のタイトル・トラック。そこはある程度は予測できたとはいえ、今回は音源でも客演しているヴァイオリニスト、Heather Paauweもステージに立つ、いきなりのサプライジングな演出を伴って幕を開けた。


新たなマテリアルを中心に組まれたセットリスト。より正確に言うなら、後半に差し掛かるまでは、ほぼ『Death Is A Flower』のすべてを再編していく流れだった。昨年までのライヴで先行披露されていた楽曲もあるとはいえ、正式な発売前の音源をここまで前面に押し出してくるのは、何より作品に対する自信があるからこそだろう。

加えて、テクニカルな面でも難解なアンサンブルを、見事なまでに具現化している。敏腕プレイヤーの集合体とはいえ、これをタイトな演奏で形にする手腕は、特にここ数作とツアーで共に音を作り上げてきた5人ならではのものだ。それゆえのグルーヴが説得力をさらに高めていく。
そのサウンドを牽引する有機体がMORRIEの歌であるのは言うまでもない。彼の様々な声色が揺るぎないパーソナリティであり、なおかつ、特にこの日は人間の奥底に潜む狂気を感じさせる、軽々しく触れてはいけないような言靈にも映った。CREATURE CREATUREという名の由来は、あるときMORRIEが耳にしたという得体の知れない生物の咆哮だが、そんなエピソードも改めて思い出されたほどだ。

自ずから生まれる張り詰めた空気。もちろん、客席フロアも緊張感で支配されるが、それは観念的なものであり、各々の身体は繰り出される楽曲に導かれるように揺り動かされている。このコントラストもまた興味深い。CREATURE CREATUREに魅了される者は、その唯一無二の体感にカタルシスを覚える。


巷に溢れる多種多様な音楽にも、相応の価値はある。確かに需要と供給という尺度もその一つかもしれない。しかし、そのうちのどれだけのものが、後世に語られるべき質を有しているのかと問えば、残念ながら多くは該当しないはずである。その点では、冒頭に記した格言に準じれば、CREATURE CREATUREの音楽は紛れもない“良書”だろう。アーティストとして、自身の創造性と真摯に向き合い、それを高い次元で立体化していく彼らの活動は、より広範に認知されて然るべきだ。無論、それはグローバルな視点も含めての話である。気づけば約3時間に及んだパフォーマンスを目にしながら、そんな思いも新たにした。



3期に渡る『Death Is A Flower』に連関するツアーは、<Death Is A Flower 2017 : Conclusion>と題された6月の東名阪公演で締め括られる予定だ。昨年末、そして今回の国内転戦に付されていた、それぞれ<The First Volume>、<The Second Volume>というサブ・タイトルから推察するなら、いわゆる三段論法としての“結論”が、次のタイミングで提示されることになる。死とは花である――この命題がどのような帰結となるのか、来る日を大いに期待したい。

TEXT : 土屋京輔  PHOTO : SEKA  


2017.03.04 CREATURE CREATURE <Death Is A Flower 2017 : The Second Volume> @ 東京キネマ倶楽部
-SET LIST-
01. Death Is A Flower(w/Heather Paauwe)
02. エデンまで
03. 虚空にハイウェイ
04. Ghost Bound
05. Phallus Phaser
06. Extasis
07. シャドウ・エレジー
08. Black Hole
09. Vanishing(w/Heather)
10. 夢鏡(w/Heather)
11. 天醜爛漫(w/Heather)
12. Labyrinth
13. So Heavenly
14. 愛と死の遊戯場
15. 楽園へ
16. Decadent Angel
17. Amor Fati
18. Sexus
19. Dead Rider
20. Swan

<ENCORE>
01. ゾーン
02. Psyche
03. エデンまで
04. Aurora

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