2017.08.29 D TOUR 2017「Dark fairy tale」 TOUR FINAL @ 赤坂BLITZ
2017.09.20

Dの描く世界はどこまで広がっていくのか。そんな思いを新たにするのが、最新シングル『Dark fairy tale』である。そのつどの作品を通して、これまでも様々なストーリーを紡いできたが、同作で打ち出したのは、妖精界と人間界の間で生じたある出来事に端を発する新たな物語。単体のテーマとして妖精を採り上げるのは初のことだが、これまで同様の入念な作り込みが、充分に聴き応えをもたらしているのは言うまでもない。


バンドのコンセプターであるASAGIにとっては、妖精はかねてから構想していた題材の一つだった。アルバム『Wonderland Savior』(2016年10月)に収録されていた「海王鯨島 亀毛海浜夢珠工場」に<妖精王の粉>なる一節が登場するが、そこに意識的な連関はなかった旨を明かしている。つまり、音源が完成した時点では、「Dark fairy tale」「Bluebell wood」「慈愛の虜囚」「Who killed fairy?」の4曲は、独立した短篇集のような位置づけでもあったわけだ。

しかし、話はそこで終わらなかった。全国ツアーの最終日となった東京・赤坂ブリッツ公演で目撃した『Dark fairy tale』の真実。新たに生み出されたマテリアルは、ライヴに向けた準備が進められる中で、過去の多彩なコンセプチュアルな楽曲群との、必然とも言えるつながりを主張してくることになったようだ。

定刻ちょうどに場内が暗転し、オープニングSEが流れて舞台の幕が左右にゆっくりと開いていく。そこにメンバーが一人ずつ登場すると、重厚なサウンドの「Dark fairy tale」がスタートした。シングルの表題曲とはいえ、物語のクライマックスを冒頭に据えたところに、彼らが純粋にストーリーの再現性に心血を注いでいたことがわかる。


邪な戦略など必要ない―—そんな気概に頷かされつつ、驚かされたのは以降の流れだった。「メテオ~夢寐の刻~」「花惑」「羽根をひとひら」「伝承されし空の物語」と続くセットリスト。大局的に言うならば、森や花など、妖精に通じるキーワードが見えてくる楽曲をセレクトし、<Dark fairy tale>の世界を押し広げていったのである。シングル制作時には、メンバーも気づいていなかったはずの共時性とでも言うべきものだろう。先述した「Dの描く世界はどこまで広がっていくのか」の一つの意味はここにある。

「紫の睡蓮をイメージして聴いてください」(ASAGI)と紹介された「空に咲(え)む花、水に棲み地に宿る。」にしても、この曲が収録された『Neo culture~Beyond the world~』(2007年)の発表時には示されていなかった概念が、このタイミングで付加されることになった。もちろん、常人は目視できないとはいえ、聴き手それぞれが想像していたこれまでの光景に、実は妖精が存在していたという解釈も成り立つ。人間界と妖精界の接点は、意外なほど身近なところにある。

そう考えると、「Bluebell wood」における、妖精王と人間の少女との出逢いのシーンもより親しみやすく感じられる。その牧歌的なシーンは「光の庭」にスムーズにつながれるが、そのまま展開した「名もなき森の夢語り」のアグレッションは、その後の悲劇を想起させるものでもあり、「三角お屋根と哀れな小熊」も人間の身勝手な振る舞いが自然環境に与える様々な影響を暗に示すものとも言える。

その後のHIROKIのドラム・ソロから、Ruiza、HIDE-ZOU、Tsunehitoの弦楽器隊も加わったインストゥルメンタル・セッションは、一連の流れを考えれば場面転換だろう。メンバーとのコール&レスポンスを含めて、人間界に位置する観客たちに“覚醒”を促す役割である。そして、改めて「Night-ship “D”」に乗り込み、「Eveの系譜」たるアクションへと航路を見定めていく。


ただし、物語は悲痛な方向へと進む。「慈愛の虜囚」と「Who killed fairy?」に綴られた光景は、フィクションとはいえ、現実社会を比喩的に映し出している。その核心をメンバー自身が理解しているからこそ、演奏の勢いや歌唱にもより力が入るのだろう。シングルで語られていた物語はここまでであり、ある種の締め括りでもある。

この結末を踏まえて我々がなすべきことは何なのか。そんな意味で配置されたのが、「迷いの森」「Guardian」だったはずである。今から10年前にリリースされた『Dearest you』が意図してした本質が、図らずもこのタイミングで浮き彫りになったと言うべきか、Dの掲げてきた信念が極めて普遍性を有するものであるのは確かだろう。また、「Guardian」の途中で何度もオーディエンスを煽る場面があるが、この日に関しては単にライヴに参加する昂揚感を高めるだけのものではない。最前線で守護する意識を高めることのみならず、大衆にプロパガンダを植え付ける時の権力者の手法であることも、最終的に群集心理に翻弄される<Dark fairy tale>の結末と照らし合わせて考えさせられるシーンでもあった。

「妖精の輝きのような、最高の星空を見せてくれ」(ASAGI)と始まった「Dearest you」は、自分たちに対する長年のサポートへの感謝をファンに捧げるものだが、「Bluebell wood」がそういった一人一人とバンドとの関係性にも思いを馳せていた点に留意すれば、この日のパフォーマンスを総括したエンディングだったこともわかる。


そんな温かな空気感は、当日がASAGIの誕生日(なおかつ“復活”の日)だったこともあり、しばしの和やかな時間へと引き継がれた。
しかし、<Dark fairy tale>はまだ終わっていなかった。予告されていた通り、「Who killed fairy?」からつながる内容を描いた「斯くも深き魂の輪舞曲(ロンド)」が最後に披露された。嵐の中で妖精王が見た幻。心情を体現する歌とそこに同調する音が、余韻を持って届いてくる。雷鳴が轟く場内は、そのまま闇に飲み込まれていった。


ドラマティックな楽曲でライヴを創造していく術はDの特性であるのは間違いない。ただ、シングルの制作期間中にASAGIとTsunehitoの間で交わされたという「Dはもっと世界観を深く追究する時期に突入している」とのやりとりからもわかるように、この日のステージでなおさら強く感じたのは、妥協を限りなく排した緻密な構成へのこだわりだ。『Wonderland Savior』に伴う公演でもそうではあったとはいえ、アルバムほどの新曲の数で表現しきれない、シングルという音源で臨んだ今回だからこそ、安易な取り組みではバンド自身のコンセプトまで崩れてしまう。今秋には新たな物語に基づく次作をリリースし、再びツアーに出ること、そしてASAGI solo worksの謎のカウントダウンもアナウンスされた。この日のASAGIのMCでは「今がどんな時代であろうと自分にしかできない音楽を追求していく」とあったが、この確たる魅せ方もより磨き上げられていきそうだ。


TEXT:土屋京輔  PHOTO:TAKUYA ORITA  


2017.08.29 D TOUR 2017「Dark fairy tale」 TOUR FINAL @ 赤坂BLITZ
-SET LIST-

-SE-
01. Dark fairy tale
02. メテオ~夢寐の刻~
03. 花惑
04. 羽根をひとひら
05. 伝承されし空の物語
06. 空に咲む花、水に棲み地に宿る。
07. Bluebell wood
08. 光の庭
09. 名もなき森の夢語り
10. 三角お屋根と哀れな小熊
-Dr.solo & リズムセッション-
11. Night-ship”D"

12. Eve(エバ)の系譜
13. 慈愛の虜囚
14. Who killed fairy?
15. 迷いの森
16. Guardian
17. Dearest you
18. 月の杯
19. 薔薇の記憶
20. 7th Rose~Return to Zero~
21. 7th Rose
22. Wonderland Savior~太陽と月の歯車~
23. 斯くも深き魂の輪舞曲(ロンド)


D TOUR 2017「愚かしい竜の夢」

11.1(水) 新横浜NEW SIDE BEACH!! OPEN/START 18:30/19:00
11.4(土) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE OPEN/START 16:30/17:00
11.10(金) 名古屋Electric Lady Land OPEN/START 18:30/19:00
11.12(日) ESAKA MUSE OPEN/START 16:30/17:00
11.13(月) 岡山IMAGE OPEN/START 18:30/19:00
11.15(水) 福岡DRUM Be-1 OPEN/START 18:30/19:00
11.17(金) 広島SECOND CRUTCH OPEN/START 18:30/19:00
11.22(水) HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3 OPEN/START 18:30/19:00
11.24(金) 仙台CLUB JUNK BOX OPEN/START 18:30/19:00
11.27(月) 札幌cube garden OPEN/START 18:30/19:00
11.30(木) 金沢AZ OPEN/START 18:30/19:00
【TOUR FINAL】
12.4(月) TSUTAYA O-EAST OPEN/START 18:30/19:00

[料金] スタンディング ¥4,500(税別)/DRINK代別
12.4 TSUTAYA O-EASTのみ スタンディング¥5,000(税別)/DRINK代別
※3歳以上チケット必要

【ファンクラブUltimate lover会員先行】
※9月14日時点でD official Fan club「Ultimate lover」に入会されている方対象
◎受付期間:9/22(金)12:00~9/26(火)23:59
◎受付URL:http://pia.jp/v/d17fcw/ ※PC/モバイル共通
◎枚数制限:お1人様4枚までお申込可 ※複数公演お申込み可
◎当落結果発表:9/28(木)18:00頃~
◎入金期間:9/28(木)18:00頃~10/1(日)23:59
※お申込画面を確認の上、上記日程までにエントリー下さい。
※お申込は抽選となります。

【オフィシャルHP先行】
◎受付期間:9/27(水)12:00~10/1(日)23:59
◎受付URL:http://w.pia.jp/s/dtour17of/ ※PC/モバイル共通
◎枚数制限:お1人様4枚までお申込可 ※複数公演お申込み可
◎当落結果発表:10/3(火)18:00頃~
◎入金期間:10/3(火)18:00頃~10/5(木)23:59
※お申込画面を確認の上、上記日程までにエントリー下さい。
※お申込は抽選受付となります。

【一般発売日】
2017/10/8(日) 10:00~


>>D official website  


>>back to "Live Report" top