D
2017.11.28

様々な作品で描かれてきたDの世界。その核心となるのは<ヴァンパイア・ストーリー>だが、去る10月27日にリリースされたミニ・アルバム『愚かしい竜の夢』では、前作『Dark fairy tale』と同じく、新たなテーマ設定がなされ、再び創造性豊かなサウンドスケープを披露している。先駆けて公開されたタイトル・トラックのミュージック・ビデオ(MV)に触れるだけでも、その物語の奥深さが窺い知れるに違いない。バンドに備わる類稀なるポテンシャルを改めて証明してみせた『愚かしい竜の夢』について、メンバー5人が語る。

――まずは今回のコンセプトの概略からお話をお願いしたいところですが、おそらく多くの人が、「愚かしい竜の夢」のMVを観たと思うんです。そこで驚かされるのが、冒頭から登場するブルガリア語ですよね。しかも、映像に登場する少女の存在です。これまでのDの作品を知っているファンなら、ここで「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」(『7th Rose』収録/2010年)を思い起こすと思うんです。
ASAGI:よくお気づきになられましたね。あの少女は実は「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」の主人公の孫にあたり、また同時に竜の血を引いています。ズメイは東欧に伝わる竜なのですが、ブルガリアを舞台に自分なりの考えと伝承を組み合わせて新たな物語を生み出しました。ブルガリアはヨーグルトのイメージが強いかと思うのですが、薔薇の名産地であり、東欧ならではの哀愁漂う雰囲気がとても魅力的な国なんですよね。中々日本人で歌詞にブルガリア語を取り入れることって珍しいと思いますが、これを機に多くの方に興味を持ってもらえると嬉しいです。
――他のみなさんはその話をどのタイミングで聞いたんですか?
Tsunehito:『Dark fairy tale』が完成した後くらいだったかな…そこで次の作品のテーマの話になって、今までのDの楽曲でも、たとえば「皇帝(ファンディー)~闇に生まれた報い~」(2011年)のように竜を感じさせるモチーフは色々あるんですけど、まったく新しい竜のテーマで行こうというのを聞いて。そして今回の表題曲のデモも聴かせて頂きましたね。
Ruiza: MVを撮ったのは9月半ばだったから、話を含めて「愚かしい竜の夢」のデモを聴いたのは7月ぐらいかな?僕は恐竜とかもそうですけど(笑)、もともとファンタジーなものが好きなので、むちゃくちゃワクワクしましたし、「キター!」って感じでしたね。曲の雰囲気からも特有の古的なものが伝わってきましたし、世界観を表現する為にロー・チューニングが採用されてるんですよ。それも今までやってこなかった新しい表現手法だし、いろんなものがリンクしていて、すごくいいなと思いましたね。
ASAGI:そうですね、ローチューニングという意味だけであれば10年前のASAGIソロ「Corvinus」でテスト的に試みて、その後Dでも使うようになったわけですが、今回はテーマが竜ということで、圧倒的な竜の存在感、波動のような咆哮、地を揺らす足音などを考えると音に重厚感が欲しかったんです。なのでただ単に重い音が良いというだけの理由ではなく、必然的な音であったとも言えます。
HIROKI:そうなんですよね。自分もRuiちゃんと同じように、幼少期にファンタジー映画ですごく衝撃を受けて、ファンタジーの世界にのめり込んでいったところがあるんですけど、何しろ竜と言えば強くて荘厳な生き物ですし、楽曲のイメージもすぐに膨らんできましたね。
Tsunehito:自分的には、ヴァンパイア・ストーリーの中での自分の役どころであるカーバンクルは、楽曲やストーリーの中で竜との繋がりが強いので、「Dragon Princess」などのように、自分が書いた楽曲にドラゴンが出てくるものもあるんですよね。だから、竜に対する思い入れのようなものもすごくあって。その意味では、まったく新しい竜のテーマで、どんなものが打ち出せるか、すごく楽しみでしたね。
――「Dragon Princess」の話が出ましたが、実は今回の「隷獣(れいじゅう)~開闢(かいびゃく)の炎~」(通常盤のみ収録)は、ヴァンパイアストーリーと繋がってくるんですよね。
Tsunehito:そうなんですよ。外伝的なものというのはASAGIさんからも聞いてたんですが、今回はカーバンクルの母親であるダリエのお話になっていて。
――ええ。そこはまた後ほど詳しく語っていただくとして、「愚かしい竜の夢」に話を戻しましょう。
HIDE-ZOU:ASAGIさんからも話があったように、今回は東欧のブルガリアに伝承される竜の物語ということで、僕もあの地域の民族音楽などを聴いて、いろいろとイメージを膨らませていったりもしたんです。ヨーロッパの他の国の音楽にも、歌詞の世界にドラゴンが出てきたりするじゃないですか。アルバムのジャケットにまで描かれていることもあったりする。ただ、ブルガリア地方に伝わるものは、一般的なドラゴンとはまた捉えられ方が違ったりするそうですね。
――そのようですね。たとえば、守護者のような存在でもある。
HIDE-ZOU:ええ。考えてみれば、日本と中国でも竜のイメージは違うわけですけどね。いつもそうなのですが、Dの楽曲制作においては、ASAGIさんから生まれる世界観によって、いろいろなものを新たに知る機会にもなるんですよね。
――確かに歌詞に綴られる一つ一つの事象にこだわりがありますしね。レコーディングにおいては、どのような臨み方をしたんですか?
HIROKI:冒頭から物語が始まる感じのアプローチの仕方も考えつつだったんですが、プロデューサーの岡野(ハジメ)さんと相談しながら、A→B→サビといった構成上のつながりを活かすうえで、今回は音を詰め込むのではなく、逆に引き算をしたほうが効果的だろうという話になって。それによって、音の太さ、力強さがより増したんじゃないかと思いますし、ストーリーに合った音作りにもなった実感はありますね。たとえば、サビでは刻まずに、スネアとフロアを同時に鳴らすという新しいやり方をしたのもその一つですし。
Tsunehito:曲を聴いたときに、大作だなと思ったんですね。ASAGIさんからも説明があったんですけど、たとえば、最初のゆっくりしている部分は、竜族と人間が共存してした時代、そこからテンポ・チェンジしてからは、時代が変わるという時の流れを表しているんですよね。そういった設定も含めて、物語が壮大に展開されていく。これまでの作品とはまた違う深さや重みを感じ取れるデモでしたし、今回のミニ・アルバムの世界が一気に広がるような楽曲が来たなと驚いたし嬉しかったですね。ベース・プレイに関しては、めちゃくちゃ速いとか細かい指の動きがあるわけではないので、その意味では特に難しいというものではないんですけど、5弦ベースの1番低い5弦をさらに1音半下げたチューニングなので、弦のテンションが保ちづらいんですよ。太い弦を張ったり、弦高を調整したりもするんですけど、これまでとは弾き方も変わってくる。そこはホントに探り探り、試しながらという感じでしたね。あとはフレーズ作りですね。たとえば、Aメロもいろんな譜割を試して、プロデューサーの岡野さんと相談しながら決めていったんですけど、曲のテンポが速いわけじゃないので、どっしりした感じのグルーヴを生み出さないといけない。そこは悩みましたね。
――民族音楽に通じるメロディなどを考えれば、ただ軽快なテンポ感でまとめ上げることも可能なはずですが、やはりそこはシリアスな歌詞といかに同調させるかですよね。それゆえにリズム・セクションも跳ねるようなノリも意識しつつ、グッと重心を低くまとめている。こういったところにバンド力は表れますよね。
Ruiza:だからギターに関しても、やっぱりどっしり弾こうとは思ってましたね。プログレ感も感じる大作になりました。細かいことはそんなに入ってはないんですよ。でも、だからこそ逆にニュアンスの付け方が難しかったですね。歌のメロディを意識しながら、結構、僕も引き算で考えてましたね。
HIDE-ZOU:僕がまず印象的だったのはリフでしたね。これはどう弾いているんだろうなと思って、実際にやってみたんですけど、今までのDはレギュラー・チューニングだったから、7弦ギターでもローBまでしかないじゃないですか。今回はさらにG#まで下げてますから、その新鮮さはすごくありました。でも、何の違和感もなく入り込めたんですよね。その意味で、僕はいろんな可能性を感じたところはあるかな。たとえば、今まではリフを考えるにしても、ローBまでに収めなきゃいけないという意識も少しはあったんですよ。だけど、ASAGIさんにしてみれば、その音が鳴っているから、その音を選ぶんだということですよね。つまり、必要な音を楽器のチューニングにとらわれずにチョイスする。曲作りにおいては、すごく柔軟な気持ちになれるキッカケでもありましたね。
――とすると、今後は8~9弦ギターなどが用いられる可能性もあるかもしれませんね。
Ruiza:興味はありますね。実は今回、僕も8弦ギターを試してみたんですよ。でも、これまでの7弦ギターとは感覚が全然違うんですよね。それで他の曲も弾いてみようとすると、弾けないんですよ。6弦(ギター)で弾いているものを7弦でやったら、当たり前のように難しいんですけど、それをさらに8弦でやろうとすると、手の構造的に、アレンジし直さないと弾けないっていう(笑)。
――曲作りということで言えば、「Draconids(ドラコニズ)」はHIDE-ZOUくんとASAGIくんの共作というクレジットになっていますね。
HIDE-ZOU:自分も制作期間にブルガリアや東欧の様々な音楽に触れて研究をする中で、思いついたフレーズを打ち込んでたんですよ。ただ、それらはよくある偶数のリズムではなく、やっぱり7拍子だったんですね。そこから広げていって、最初のデモの段階では、すべて7/8で構成して。それをASAGIさんに聴いてもらって、アイデアとして、たとえば、すべて7/8に収めるのではなく、いろんな拍子が混在して、展開を見せていったほうがいいんじゃないかということや更にはメロディも洗練してもらったりして、曲を大幅に改造していったんです。
――でも、まず7拍子に帰着させたのはさすがですよね。ブルガリア特有のリズムは、7拍子で区切られるものが多いそうですから。
HIDE-ZOU:そう、奇数ですね。だから、5か7か9かというところですけど、最初はフルートの音で作ってたんです、自分でMIDIで打ち込んで。曲作りをするとき、大抵は8で打ち込むと思うんですよ。でも、今回はブルガリアの7の音とか聴いてたからかもしれませんが、7拍子を変拍子に感じないぐらいの変な感覚になってたんですよ。頭で考えるのではなく、身体に染み付いていたのかもしれないですね。その意味では面白いですね。
ASAGI:Dの初期の頃の曲はオケに対して全て僕がメロディをつけていたのですが、メロディ=作曲にあたってくるのと、自分自身が作曲をするので、それぞれの個性を出すためにも途中からは作曲者がメロディまで完成させることになったのです。勿論、歌うにあたって基本のメロディから編曲する場合も今でもよくありますが。今回はHIDE-ZOUくんが持ってきた曲に対してこうしたらもっと魅力的になるだろうなという思いから再構築していき、最終的には二人の納得する形に持って行けたと思います。変拍子って難解さもあって好みが分かれると思いますが、僕は独特の拍の取り方って結構自然に入ってくるので好きですね。ちなみに「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」は5、7、9の奇数の変拍子を全て取り入れているので、演奏は難易度が高めかと思います。
Ruiza:HIDE-ZOUくんらしいなと思うフレーズは多々ありましたし、なるべく再現したいなと思ってましたね。だから、変拍子の譜割はすごく練習しましたけど、前に「花摘みの乙女」を録ったときにも、ブルガリア音楽のリズムは奇数だねって話をしてたんで、自然と身体に入ってきたところはありますね。僕も今回の曲作りに当たって、ブルガリア民謡とかも聴いたりしてましたし。
――メンバー自身は自然体で臨んでいたとはいえ、言葉だけではなく、音そのものでも楽曲の説得力を高めている好例ですよね。とはいえ、この曲の演奏は変拍子を的確に弾くというだけでは終わらない難しさもありそうですが。
Tsunehito:難しかったですね。ノリを細かく刻んで感じていると、この曲のよさ、ゆったりした感じ、大きな流れみたいなものが全然出せないんですよ。かといって、大きなノリばかり意識すると、本来のリズムがとりづらかったりする。しかも、それがセクションごとに8分の7から8分の8になって、8分の7になって、8分の6になってとか、どんどん変わっていきますからね。
――リスナーが、変に変拍子が気になるような聞こえ方はしないほうがいいわけですよね、この曲の場合。
Tsunehito:そうですね。カクカクしたら、曲として聞こえなくなってくるんで。
Ruiza:そう、だから練習するのもすごく時間がかかりましたね。リズムを身体に入れるために、ここはこういうふうに捉えようとか、自分の中でルールを決めたりして。
HIROKI:奇数進行というのは、拍にとらわれると、カッチリ感が出すぎてしまって、ビートが殺されてしまいがちなんですよね。だから、リズム・パターンは岡野さんといろいろ吟味しながら、スネアやキックの位置を決めていったんですけど、テンポ感も相まって、楽曲の流れはすごくいい感じにはなってるんですよね。たとえば後半に進むごとにスネアの位置とかも変わってくるような、トリッキーな部分も入れつつなので、ライヴでもこれを最大限に表現していきたいですね。頭で考えちゃダメですね(笑)。とにかく、歌がすごく自然に聞こえる演奏を心掛けています。
――イントロで鳴っているアルペジオの音も独特ですよね。
HIDE-ZOU:あれはエレキでやってるんですけど、実はシーケンスを混ぜてるんですよ。さらに自分で弾いた音をオクターブ下でピッチシフトして。だから3種類の音ですね。でも、絶妙なバランスで鳴らさないと、ああいう響きにはならない。もともと星空のイメージだったんですけど、そこを意識した結果、りゅう座流星群のいろんな星のキラキラ感を出せたという。ASAGIさんと僕の合作って初めてなんですよ。歌詞を見てみると、仲間を思う気持ちを大切に歌っている。だから、曲を一緒に作ったということで、お互いを思い合う気持ちが反映されているのだとしたら、すごく嬉しいなと思いますね。
――その気持ちは“りゅう座流星群”を意味する曲名にも、竜族の比喩としても用いられているわけですね。
ASAGI:曲のイントロを聴いて澄んだ夜空に星が振って来るイメージが浮かんでそれをHIDE-ZOUくんに伝えたらイメージにぴったりだったそうで喜んでくれました。自分で曲を作る時はイメージ先行、またその逆もあるのですが、メンバー作曲の場合は曲を聴いてからイメージを膨らませるわけじゃないですか。なのでやはり試聴一回目が一番キモになってくる部分はありますよね。竜と夜空…何か共通点はないかなと考えた時に“りゅう座流星群”のことを思いついて。自分のイメージとしては大型の竜は基本、群れないわけですよ。それでも時には集まって想い出話に花を咲かせることもあるだろうなと思って、その時に故郷に流星のように集まってきたらロマンティックだなと思い、物語を書き進めていきました。
――歌詞の中には、“ギュロヴァ・ラキア”という蒸留酒の名前が出てきますね。これは当然、薔薇を思い浮かばせるためのレトリックですよね。
ASAGI:ラキアというのはブルガリアで親しまれているお酒のことなんですが、中でも“ギュロヴァ・ラキア”は薔薇のラキアなんですね。ブルガリアといえば薔薇ですし、Dと言えば勿論薔薇なので、そこは欠かさず、でもさりげなく入れてみました。いつか本当の“ギュロヴァ・ラキア”を飲んでみたいですね。
――「遥かな涯へ」はRuizaくんが作曲を手掛けていますね。イントロのヘヴィなリフですぐにわかると思いますが。
Ruiza:そうですか? これは表題曲を受けてから書いたんですけど、ドラゴンはどんなところに住んでいるのか、どういったものなのか、そういったイメージを膨らませながら作ったんですよ。今回のMVにもありますけど、暗い中で炎が見える画などが見えてきたりして。
HIDE-ZOU:僕もRuiちゃんらしい曲だなと思いましたね。しかも、これはギタリストとしての視点ですけど、弾いていて楽しいフレーズなんですよね。ライヴ感もすごくある印象かな。だから、レコーディングのときに、ノリを出すためにちょっと工夫したりして……初心に帰るというか、何パターンかのクリックを聴きながら弾くというのを試したんですけど、クリックの種類や音の聴こえ方によって、スピード感にも変化が出てくるんですよ。岡野さんから「16ビートのループを聴きながら弾くとノリが出てくる」というアドバイスを昔から受けていて、その試みもギターを弾いているときの心地よさに結びついたかなと思います。ライヴのときは、HIROKIさんの作ったリズム、みんなの音を聴くことになりますから、レコーディングのときのクリック以上にノリが掴めるんじゃないかなと思いますね。
HIROKI:そんなに速くなくて、どっしりしたプレイができるテンポ感なんですけど、意外とこのテンポ感の喰らいつき方とかは、自分は得意なほうだと思っているんですよ。たとえば、AとかBからのサビで頭打ちになったときの喰らいつき感とかは、ちょっと抑揚をつけられる、プレイヤーの技術がすごく問われるところなんですけど、デモの時点でRuiちゃんが結構作り込んできてくれたので、それをよりよく聴かせるアレンジをさせてもらって。実際のステージでもライヴ感が出るだろうなと想像できますし、すごくやり応えのある曲でもありますね。
――Tsunhitoくんらしいベース・フレーズも随所に効いていますね。
Tsunehito:そうですね。ヘヴィな部分もあったり、サビでの疾走感だったりもそうなんですけど、曲のノリというか勢いみたいなものを出すのに、この曲もいろいろ弾き方を試したんですよ。ただ丁寧に弾くだけだと、小さく収まってしまうんですね。だから、ベースの粒立ちだったりが聞こえるような弾き方にしたり、かといって、はみ出すわけではなくて、リズムとしてドラムと一緒に下を支えながらもしっかり主張するようなものを意識して。サビとかのフレーズは、特に開けた感じを出したいなと思ってたので、音の運び方だったりも自分らしい感じだなとは自分でも思いますね。
――それがまた的確なんですよね。
Tsunehito:ははは(笑)。コードの移り変わりとかも、ギターとかドラムはシンコペーションしてないけど、ベースだけ食わせて入ったり、彩りみたいなものが出せたなぁと思います。箇所箇所によって、いろいろ変えてみたりして。
――歌詞はドラゴンが主役ではありますが、最終的には、人類はいかに愚かなものかといった主題にも行き着くように感じるんです。
ASAGI:コンセプトシングルなので、主題曲である「愚かしい竜の夢」を中心に、全ての曲が繋がっているのです。「遥かな涯へ」の竜はズメイの親友だったわけですが、トラキアの王と交わした約束を守るために、王の死後も墓守として居続けたわけです。これは竜に限った話ではないですが、人に一度心を許した獣はどうしても人を恐れなくなる部分ってありますよね。その優しさが仇となり、人に命を奪われることになるのです。竜達は普段は群れたりはしませんが、離れていても共鳴し合うことができるので、命を落とした竜の叫び、そしてそれを耳にした仲間の気持ちは各地に響き渡ったのだと思います。
Ruiza:これも「Draconids(ドラコニズ)」と同じような仲間を思う気持ちを感じましたし……今回の他の曲に関しても、改めて「人として」みたいなことを感じることもありましたね。生き物の在り方というというのか、深いなぁ、凄いなぁと思いましたね。
――そこは永遠の課題なのかもしれませんね。次の「Cannibal morph」はTsunehitoくんの作曲ですが、イントロから突進するような勢いを感じますね。
Tsunehito:そうですね。何曲かは提出していたんですけど、最初に出していた何曲かは、わりと静かな曲ばかりだったんですね。今回のこのミニ・アルバムの中でも、ライヴ感のある、竜の力強い部分が感じられる楽曲が欲しいなという話もあって、意識して作っていきました。この曲も細かい何かというよりは、ホントに突進する感じとか……どっちかと言ったら、最初のイメージが、大地や大気、そういうのにズシズシ響くようなドラゴンのオーラというか気というか、そういうものが出せたらなぁと思ってて。
HIROKI:もうイントロの段階で、「キテるな、これ!」って(笑)。そう思いながらアレンジさせてもらったんですけど、どっしり感というのを最重要視してて。Aメロのアプローチとかも斬新でしたね。このズシズシくる感じは、生の音で体感したら凄いだろうなって思うんですよ。そのパワー感をライヴでも表現したいですね。
Ruiza:勢いは凄いんですけど、僕もどっしり弾こうと思ってて。細かい音符もいくつか入っていたりするので、裏拍が難しかったりするんですけど、一体感を出すために、引いて、落ち着いて弾くように心掛けましたね。
HIDE-ZOU:最初にデモを聴かせてもらったときに、すごく攻撃的な感じがしたんですよね、いろいろなエッジ感があって。だから自分がリフを弾くときもそのエッジ感を重要視して。基本的に自分の傾向がスタッカート気味だったりするので、音の伸ばし具合がまた重要なんですよね。
――サウンドは攻撃的ですし、歌詞のストーリーもそれに符合したものではありますが、情景描写をする一方で、何らかの事情で歯車が狂ってしまうような、儚い生き様も読み取れますよね。
ASAGI:作詞において言えるのは、個人的には静かな曲やミディアムテンポの曲に比べて激しい曲って難しいのです。必ずしも、激しい=怒りではないですし、激しい=破壊でもありません。単純に感情だけを曲にぶつけても、第三者が触れた時に同調しにくいと思うんですね。なので自分の中では難しいです。「Cannibal morph」に関しても最初に曲を聴いた時点では、実は今とは違う結末も視野にあったんです。でもこれだ!っていうほどしっくり来なかったので、やはり考え直していた時にお風呂に入ったんですね。その時にふと自分が両生類の幼体になったような気がして、そこから“共食いモルフ”のことをふと思い出して竜と絡めていきました。自然の摂理とはいえ、モルフが種としてより強い個体を活かすために同属を喰らう定めにあるというのはとても悲しいですよね。喰らう方も喰らわれる方も両方が辛いんです。その痛みを歌詞にしましたが、自分でも良い物語の結末(現段階での)にできたと思っています。
――コーラス・パートをブルガリア語でやっていますが、これはライヴのときにも同様に?
Tsunehito:そうですね。同様にブルガリア語で叫びます。
――とすると、やはりオーディエンスもしっかり覚えないといけませんね(笑)。でも、ブルガリア語の大合唱が起こるライヴなんて、なかなかないでしょうね。
HIDE-ZOU:そうかもしれませんね。本国ブルガリアの方々にも是非聴いていただきたいですね。
Tsunehito:余談なんですけど、今回、MVの最終のオーサリングで使ったスタジオが、初めてのところだったんですよ。偶然にもそのすぐ近くにブルガリア大使館があって。俺、すごくびっくりしましたね。衝撃でした。
HIDE-ZOU:そうだった!
Tsunehito:さらに言うと、さっきの「Draconids(ドラコニズ)」と表題曲を初披露したのが10月9日のライヴだったんですけど、その前日がりゅう座流星群が観られる日だったんですよ。この偶然も凄いねって話をみんなでしてたんですよ。
ASAGI:そうそう、前日が“りゅう座流星群”が最も観られる日だったので、メンバーにLINEで報告しました!(笑)色々と偶然が重なり、やがて必然に変わることが多いのもDならではかなと。
――またそういう不思議な出来事が重なったわけですね。でも、今回のミニ・アルバムを通して、ブルガリアの方々と交流がなされるキッカケになるといいと思いますよ。そして、5拍子の「竜哭(りゅうこく)の叙事詩(エピック)」。これはクワイア・パートが印象的ですが、ここまで合唱が多いのも新鮮ですよね。
Tsunehito:そうですね。シンガロングにつぐシンガロング。
HIDE-ZOU:ライヴのときには、その空間を一色に染め上げる楽しみを感じてもらいたいですよね。
――確かにそんな光景も見えてきます。ただ、歌詞の内容と併せて、そういった構成にも意味がありそうですね。
ASAGI:この曲は物語の中での“竜を呼ぶ歌”の歌詞でもあります。竜の血を引く者達が代々受け継いできた曲で、実際に竜を呼ぶことができるのは竜と心を通わせ、竜石を手にし、多くの娘の中から選ばれた乙女だけなんです。薄らと竜の血を引く者はたくさんいるので、この歌自体を知っている者は多いのですが、時と共にその曲の重みも薄れてしまっている現代社会も背景にはあります。勿論ライヴではファンの皆さんに竜の血を引く民として歌ってもらう場所もあります。その声を聴いて僕ら竜族はステージに集まることができるのです。ブルガリア語ではなく日本語ですけどね!(笑)
――そして、先ほど話題に出た「隷獣(れいじゅう)~開闢(かいびゃく)の炎~」ですね。“外伝”ということですが、物語のその後が自ずから見えてきますし、ピコ・デル・テイデという実在する火山の名前が登場するところなども、また興味深く思えてきます。
ASAGI:時系列的には「Cannibal morph」からかなり時が経っていますね。そしてヴァンパイアストーリーにも繋がっている部分もありますので、敢えて外伝という位置にしました。元々自分の世界観から生まれた存在は個々でありながら、どこか繋がっているんです。昔から言ってるんですが大きなジクソーパズルというか地図というか、離れた場所のピースや破片が徐々に埋まって行ってひとつの世界になるんです。なのでそれぞれがリンクしていたり、またスターシステムとして登場させる場合はこれからもあると思います。西を統治するカーバンクルが生まれる前に、母ダリエは西を統治しているわけですが、中央をドイツに置いているので西=スペインということになります。ちなみに火山があるカナリア諸島には竜血樹という樹齢5000~7000年とも言われる固有の植物がシンボルとなっています。樹液は勿論赤くて古来より薬として流用されていたそうです。かなり興味深いですよね。
Tsunehito:曲としては、この世界観の中にある民族テイストをたくさん入れたいなと思って、パーカッションだったり、イントロのテーマ・フレーズとかを考えたんですけど、最初、炎を囲んで踊っている感じのイメージがあったりして。そこをASAGIさんが歌詞においても上手くテーマを当てはめてくれて。歌詞をつけていただいてから、ヴァンパイア・ストーリーと繋がったのを知って、すごく嬉しかったですね。メロディに関しては試行錯誤しました。最初に作ったものからは、ASAGIさんのアドヴァイスを採り入れながら二回ぐらい変えて。曲自体のノリも、跳ねてる感じで軽快ではあるんですけど……。
――そう、その抑え方が絶妙ですよね。
Tsunehito:そうなんですよ。表題曲のフレーズを作ったときの話にも通じるんですけど、岡野さんと相談したときに、1小節の中のベースの譜割の16分の1個のズレが曲全体のグルーヴを決めてしまう、そういったフレーズの重要さみたいな話をしてもらったんですね。実際に当初はベースも全然違う、普通のリフっぽいフレーズを打ち込んでたんですよ。結果、スラップのオクターブっぽいフレーズで、それを全部ピックで弾くことにして。サビも何パターンか試した結果、休符がすごく入っている今の形になって、パンチ力、開け方みたいなものが、飛躍的に出せたなぁと思いますね。
Ruiza:すごくTsuneらしい曲だなと思いましたね。僕も曲に合うフレーズを探して行った感じがあるんですけど、これもやっぱ引き算で、ギターが意外と伸ばしている中で、ベースの動きだったりが見えるようになればいいなぁと思って、結構色んなパターンを考えましたね。
HIDE-ZOU:特にこの曲で自分的にポイントになるのは、サビのフレーズなんですね。Tsuneと岡野さんからの要望もあって、規則性のあるものではない、コードもいろいろ変わっていく、ストレートじゃない変化球みたいなものが感じられるようなフレーズになりました。基本的にテンションを入れてたりするんですけど、ただのテンションじゃなくて、要所要所で実はルートのオクターブだったり、彩っている部分の役割感は、ちょうど曲の隙間にあるというか。Ruiちゃんとの絡みで、ちょうど隙間にあるその音使いが、すごく練られてるなって思いますね。
HIROKI:この曲も作曲者であるTsuneがドラム・パターンも作り込んできてくれたので、そのつながりを上手く自分なりに消化してやらせてもらったんですが、ライヴでも演奏していて気持ちいいテンポ感だろうなと思いますし、音的にも1音1音がしっかり出るようにアレンジさせてもらいました。
――これもより的確なグルーヴがステージの場で追究されていくのでしょうね。さて、11月1日から始まる本作を引っ提げてのツアーですが、どんな内容になりそうな予感でしょう?
HIROKI:既存曲との繋がりもありますし、セットリストもいろいろとお客さんも想像して来るんじゃないかなと思いうんですよ。ホントに今回も全曲やり応えがありましたし、ミニ・アルバムの世界を表現しつつ、Dらしいライヴが届けられればいいなと思ってるんで、期待していて欲しいですね。
Ruiza:まずはこのミニ・アルバムの曲をしっかり届けたいですね。難しい曲が多いので(笑)、まさに今、スタジオに入ったりして練習してますけど、しっかり準備をして臨みたいです。今年最後のツアーですし、みんなに集まって欲しいなと思います。
Tsunehito:ミニ・アルバムというヴォリューム感ですけど、それぞれの曲がかなり濃いので、ライヴでどれだけ魅せられるか、そこが重要になってくると思うんですね。さっきの「隷獣(れいじゅう)~開闢(かいびゃく)の炎~」の話もそうですけど、Dの既存の曲で竜といったらあれかな?とか、どんな曲が飛び出すか、楽しみにして来てくれたらなと思います。
HIDE-ZOU:また新たなコンセプトの上にできた作品を引っ提げてのライヴになるので、夏の『Dark fairy tale』のツアーとはまた違った空気感になると思うんですね。今回のツアーは短期間でのわりと詰まったスケジュールなので、より濃厚な一ヶ月間になるんじゃないかな。アウトストア・イベントや終演後の特典会もありますし、ファンの人たちにも楽しんでもらえるかなと。しっかり1本1本大事にしていきながら、今年の締め括りとして、いいツアーにしたいなと思います。
ASAGI:ファイナルでは様々な発表もありますし、是非集まってほしいです。CDとして聴く音楽は自分達の中でその時そのその時で最高のものでありたいと常々思っています。ライヴではその音楽を如何に忠実に表現できるかが大事だとは思うのですが、ライヴは生ものなので、その日の環境によっても異なって来る場合も少なくありません。メンバー、スタッフ、そしてファンが一緒になって創り上げるのがライヴです。同じライヴは一日としてありません。Dにしか魅せられない世界が必ずあります。各々が物語に登場する大事な一人として「愚かしい竜の夢」の物語を動かしてくれると嬉しいなと思います。2017年を締め括る旅はもう少し続きます。今年最後の僕らの姿を、また大いなる竜族の最後を、一族としてその目に映してほしいです。

取材・文/土屋京輔


2017.10.27 Release
愚かしい竜の夢 A-TYPE (CD+DVD) 限定盤
GOD CHILD RECORDS/GCR-148/¥2,871 (税別)/5Songs CD & 1Song DVD + MV Making/Limited Edition
[CD]
1.愚かしい竜の夢/2.Draconids(ドラコニズ)/3.遥かな涯(はて)へ/4.Cannibal morph/5.竜哭(りゅうこく)の叙事詩(エピック)
[DVD]
「愚かしい竜の夢」 Music Video +「愚かしい竜の夢」Music Video Making
愚かしい竜の夢 B-TYPE (CD) 通常盤
GOD CHILD RECORDS/GCR-149/¥2,315(税別)/7Songs CD
[CD]
1.愚かしい竜の夢/2.Draconids(ドラコニズ)/3.遥かな涯(はて)へ/4.Cannibal morph/5.竜哭(りゅうこく)の叙事詩(エピック)/6.隷獣(れいじゅう)~開闢(かいびゃく)の炎~(通常盤のみ収録)/7.愚かしい竜の夢(Instrumental)
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D TOUR 2017 「愚かしい竜の夢」

11/ 1 [水] 新横浜NEW SIDE BEACH!!
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード344-157)
ローソンチケット(Lコード71035)
イープラス http://eplus.jp

11/ 4 [土] 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
OPEN/START 16:30/17:00
チケットぴあ(Pコード344-218)
ローソンチケット(Lコード72259)
イープラスhttp://eplus.jp

11/10 [金] 名古屋Electric Lady Land
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード345-367)
ローソンチケット(Lコード42050)
イープラス http://eplus.jp

11/12 [日] ESAKA MUSE
OPEN/START 16:30/17:00
チケットぴあ(Pコード347-763)
ローソンチケット(Lコード51402)
イープラス http://eplus.jp

11/13 [月] 岡山IMAGE
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード344-354)
ローソンチケット(Lコード69127)
イープラス http://eplus.jp

11/15 [水] 福岡DRUM Be-1
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード343-882)
ローソンチケット(Lコード81404)
イープラス http://eplus.jp

11/17 [金] 広島SECOND CRUTCH
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード344-355)
ローソンチケット(Lコード69128)
イープラス http://eplus.jp

11/22 [水] HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード344-157)
ローソンチケット(Lコード71071)
イープラス http://eplus.jp

11/24 [金] 仙台CLUB JUNK BOX
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード346-084)
ローソンチケット(Lコード22139)
イープラス http://eplus.jp

11/27 [月] 札幌cube garden
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード343-961)
ローソンチケット(Lコード12465)
イープラス http://eplus.jp

11/30 [木] 金沢AZ
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード344-221)
ローソンチケット(Lコード57537)
イープラスhttp://eplus.jp

【TOUR FINAL】
12/ 4 [月] TSUTAYA O-EAST
OPEN/START 18:30/19:00
チケットぴあ(Pコード344-157)
ローソンチケット(Lコード70935)
イープラス http://eplus.jp

[料金] スタンディング¥4,500(税別)/DRINK代別
12/ 4 TSUTAYA O-EASTのみ スタンディング¥5,000(税別)/DRINK代別
※3歳以上チケット必要

[一般チケット] 発売中


New Mini Album「愚かしい竜の夢」& DVD「D TOUR 2016~2017 Wonderland Savior ~月の歯車~」発売記念 ご購入者対象 全国アウトストアイベント開催決定!!!

■11月2日 [木] 横浜 CIRCUS
■11月5日 [日] 新潟 community space 6 studio
■11月9日 [木] 名古屋 栄 FAMILLA
■11月11日 [土] 京橋 BERONICA
■11月14日 [火] 岡山 Wood Box
■11月16日 [木] 福岡 DRUM Be-1
■11月18日 [土] 広島 Bad Lands
■11月21日 [火] HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
■11月23日 [木] 仙台 Nota Blanca
■11月26日 [日] 札幌 マルチスペースF
■12月1日 [金] 金沢 AZ Gスタジオ
■12月3日 [日] 東京 青山 EDITION
■12月5日 [火] 東京 なかのZERO 小ホール

※発売記念 ご購入者対象全国共通アウトストアイベント & ライブ終演後イベントの詳細・参加方法・注意事項は、こちらをご覧ください。


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