2017.01.27 D TOUR 2016 冬ツアー「Wonderland Savior ~月の歯車~」-Grand Final- @ 新宿ReNY
2017.02.08

本来なら昨年末にTour Finalを迎える予定だった。諸般の事情から、今回のライヴは開催さえ危ぶまれていた。
Dが描き続けてきた「アリスの世界」。最新アルバム『Wonderland Savior』を軸に「アリス三部作」の完結編となるツアー「Wonderland Savior ~月の歯車~」を、彼らは1月27日(金)新宿ReNYを舞台に開催。描き続けてきた壮大かつ幻想浪漫な物語を華やかな大団円を通して描き切り、無事に最後に記した音の筆を置くことが出来た。
1月27日と言えば「不思議の国のアリス」の作者であるルイス・キャロルが生まれた日。アクシデントを乗り越えたその先に、偶然とはいえ必然の出会いをたぐりよせてしまうのも。その日が「アリス」の物語を閉じる日に選ばれたのも、「アリス」の世界を愛するDのために、彼方の世界からルイス・キャロルが届けたプレゼントだったのかも知れない。ではそろそろ、この日の模様をお伝えしよう。

さぁ、物語の幕開けはもうすぐだ!!

場内に流れるのは、アリスの国の住人たちがはしゃぐ姿を投影した音楽の数々。その音色に触れているだけで、気持ちがわくわく騒ぎだしてゆく。むしろ、早くも現実の世界からワンダーランドの扉を開け、一歩踏み出したい気分。闇の先に聞こえる音へ導かれ、あとは向こうの世界へ真っ逆様に堕ちていけばいい。その勇気を、与えてくれるのはもちろん…。

スクリーンに映し出されたのは、アリスの世界へ誘うファンタジックな映像の数々。躍動的なSEへ変わると同時に、舞台上へ次々とメンバーが姿を現した。さぁ、物語の幕開けはもうすぐだ!!

場内に咲いた無数の華。揺れる大きな黒い渦。もっともっと魂を開放せよ!!

轟く重い衝撃が、迷い込んだ観客たちを連れ出したのは熱狂の空間だった。挑むように、期待を抱くファンたちの感情を掻き立てるようDは『Underground Revolution~反逆の旋律(メロディー)~』を叩きつけた。まさにこの音は反逆の証だ。理性を破壊し、異世界へ飛び込み本当の自分を開放するための革命の音楽だ。場内に咲いた無数の華。揺れる大きな黒い渦。もっともっと魂を開放せよ!!、そう導くように、Dは猛る音を響かせていた。
熱く火照る気持ちへさらに熱狂を注ぐようDは激しくダークな、痛いくらいに過激に攻めゆく黒い感情を突き付けた。『シュレディンガーの夢遊猫(むゆうびょう)とジャッカロープの杖』が漆黒の世界へ夢を描いてゆく。暴れ狂う音の中へ誰もが心地好く溺れていた。昂る想いを解き放ちながら、一緒に黒い熱狂の中で激しく絡み合っていた。これぞ最高のエクスタシーじゃないか。
闇の舞台へ誘うように響きだした荘厳な音色。その先に流れたのは、鬱屈とした感情を漆黒に染め上げた、感覚の螺子を狂わせる雄大な闇の交響曲。誰もが『Keep a secret~帽子屋の憂鬱~』に身を預け、大きく身体を折り畳んでいた。狂おしいその歌は、何時しか少しずつ光を帯び始めていた…。
次々と天高く突き上がる無数の拳。光を、希望をつかむようにASAGIが『海王鯨島 亀毛海浜夢珠工場』を雄々しく歌いあげた。その歌声は、沸き上がる高揚を魂に注いでゆく。その魂は、触れた人たちの心を内側から輝かせていく。様々な感情を掻き混ぜながら、Dはフロアーにいる仲間たちを、次の舞台へ希望を胸に連れ出した。


共に勝ち取ったこの日を最高にしていこう!!

「今日はGRAND FINAL。みんなの力や想いが夢と現実を繋いでくれたからこそ、今日を迎えられたと思います。共に勝ち取ったこの日を最高のものにしていこう!!」


ASAGIの「心に咲いた薔薇は枯れない」の言葉に導かれ、華麗に、美しい旋律を振りまくように『Rosarium』が場内へ広がった。熱を抱きながらも心を陶酔させる華やかな、でも少しの痛い刺激を携えた演奏や歌が、意識を蕩けさせる熱いまどろみの中へ連れてゆく。なんて鮮やかな熱狂だ!!

サイバーダンスロックナンバー『Egg Supermacism』では、卵の振り付けを実施。その刺激的な演奏とまろやかな歌声に導かれ、大勢の人たちが身体を揺らしていた。サビでは、会場中の人たちが頭上高く掲げた両手で卵の形を作ってゆく。卵ポーズをしながら身体を折り畳む姿は他では味わえない光景だ。




君たちの笑顔に魔法をかけてあげましょう

「今日は描き続けたアリスの世界の完結編。何気ない毎日が幸せでありますように。君たちの笑顔に魔法をかけてあげましょう」


美しくも鮮やかな。何よりもゴージャスでシンフォニックな幕開けだ。一転、ギターがソリッドな音を掻き鳴らすと同時に、『HAPPY UNBIRTHDAY』が夢の世界へと誘う。激しさと華やかさを、何より心を無邪気にはしゃがせる幸せな想いの旋律を詰め込んだこの曲は、触れた人たちを無条件で笑顔に変えてゆく。誰もが目尻を下げた笑顔を舞台上へ向け、一緒に「YEAH!!」と叫び声を上げ飛び跳ねながら、幸せな熱狂の魔法に酔いしれていた。
舞台は表情を変えだした。哀愁を帯びた音色に導かれ、バラードの『月影の自鳴琴(オルゴール)』がゆったりと悲哀を帯びた物語を綴れ織ってゆく。夢を追いかける果てなき思い。嘆きを抱えた心模様を、彼らは美しくもロマネスクな音のベールで包み、壊れそうな心へ優しく寄り添い、そっと背中を押してくれた。
ドラマを描くようRuizaのギターが鳴り響くと同時に、演奏は華やかに騒ぎだした。『Alice』が連れ出したのは、意識を激しく幻惑させながら興奮へ陶酔させてゆく物語。轟く音の粒たちが、行進するように熱狂へと連れて逝った。

躍動する音の鼓動で心を微睡ませたHIROKIのドラムソロ。彼の叩き出す激しい鼓動へ絡みあう演奏陣。リズム隊によるセッ ョンが、突き上がる無数の拳と絶叫を場内中へ呼び起こしてゆく。そして…。


確かに僕らは5人と抱き合っていた。目に見えぬ想いの両手を互いに差し伸べ、美しい音色の中で抱きあいながら夢を語りあっていた。


チェシャ猫のしっぽ(ペンライト)を手にASAGIが登場。場内には、数多くの紫とピンクのシマシマのしっぽの光が揺らめいていた。幻想的な、でも何処か極彩色な音の色も振りまきながら『Psychedelic Horror Show』が場内に鳴り響いた。このショーは、意識を消し去り熱狂へ堕としてゆく。ASAGIの歌に導かれ、誰もがしっぽを大きく振りながら不思議な夢の世界へ陶酔していた。
ASAGIの歌へ誘われ、目の前に広がったのは何処か奇天烈な、でも確かな華やかさを持って感覚を熱く麻痺させてゆく偏屈な宴の場。『フューシャピンクとフランボワーズの鍵盤』が、チェシャ猫の眼に映った不思議な世界をフロアー中の人たちに体感させていた。誰もが輝くしっぽを振りながら、無邪気に戯れていた。

弦楽の調べに乗せ、沸き上がる感情と共にASAGIが『MASTER KEY』を高らかに歌いだした。彼の想いへ重なりあうように流れる、気持ちを掻き立てる華やかな音色。なんて勇壮なのにファンタジックな歌だろう。その夢世界が、身体へワクワクとした刺激を注いでゆく。誰もが舞台上で輝くメンバーたちへ大きく両手を広げ、想いを捧げていた。終盤には、場内中へ無数のトランプが降り注がれた。この瞬間、いや、この歌に触れながら、確かに僕らは5人と抱き合っていた。目に見えぬ想いの両手を互いに差し伸べ、美しい音色の中で抱きあいながら夢を語りあっていた。

君達の存在こそがアリスだ。君らの歌声でこの世界を救ってくれ!!

「お前ら一緒に闘ってくれるかー!!お前達の存在こそがアリスだ。その歌声でこの世界を救ってくれ」


「ウォウウォウウォー」、会場中に響いた観客たちの重なりあった歌声。その温かい合唱が呼び込んだのが、熱狂の戦いを挑むに相応しい激烈な『Wonderland Savior~太陽と月の歯車~』だ。なんて魂に沸き上がる興奮を注入してゆく歌だ。突き上がる拳を、その絶叫を消したくはなかった。いや、もっともっと熱した意識のままどんどん上がり続けていたい。誰もが頭を振り乱し騒いでいたその風景こそが一つの答え。「ウォウウォウウォウウォーウウォー」と叫ぶ歌声は、熱狂という戦い中で確かな絆を感じとっていた証だ。
勇壮に駆けだした調べが連れ出したのは、華やかな黒騎士へ忠誠を誓う儀式。ゴシックシンフォニアナンバー『黒薔薇の騎士』が、漆黒の熱狂を、黒く染め上げた魂のシュプレヒコールを上げてゆく。誰もが勇壮な騎士の化身となり、剣の代わりに拳を突き上げ、ASAGIへ熱く忠誠を捧げていた。止まぬ忠誠の儀式、黒い興奮はどんどん赤く熱した輝きを場内に描いていた。凛々しさを持って攻めたてるメンバーたち。その演奏は、感情を激しく熱く掻き立て駆け上がらせてゆく。そう、僕だちは駆け上がれるんだ。彼らと一緒に魂を熱してさえいれば、何時だって、何処までだって高く飛び跳ねていけるんだ。
これまでの熱狂を優しく包むように、Dはバラードの『水たまりの空~ドードー飛行記~』を演奏。悲哀を秘めたその歌声と調べは、火照った感情にゆっくりと穏やかな音の滴を降り注いでいく。誰もが、舞台上へ想いの視線を向け続けていた。いや、その様に、身動きできないくらい心が釘付けになっていた。命消える切ない物語へ、いろんな想いを重ねていた。映像には、飛べないはずのドードーが空を飛んでゆく映像が映し出されていた。そう、みずからの意志の持ち方次第で、僕らは不可能さえ可能にしていける。ドードーが空を飛ぶように、僕らが胸に秘めたあきらめの気持ちにさえ可能性の光が注がれるはずだと…。

「これからもずっと、何処までも果てしない七色の空を旅しよう」。最後にDは華やかに『七色革命』を奏で、触れた人たちの心に飛び立てる翼を授けてくれた。その音楽は心に革命を植えつけてゆく。ここまでDが綴った冒険の物語は、共に冒険をしていた人たちの心に明日へ歩むための輝く心の翼を植えつけていった。確かに心は動き出していた。彼らの導きによって新しい扉を開ける勇気を手にしていた。



これからも俺はガーディアンとしてお前らを守るからな!!

「今日は三部作の完結編。あふれだす衝動に素直になって音楽を作ることで純度の高い作品を作り続けてこれました。これからもアリスの世界を愛してくれ、いいかー!!。続く次のステージからDは新たな物語を描いていきます。誰がなんと言おうと、これからも俺はガーディアンとしてお前らを守るからな」
ASAGIの言葉へ導かれ、アンコールは『Guardian』からふたたび熱狂を描き始めた。激しく猛る演奏に煽られ、頭を振り乱し、拳を突き上げ暴れる観客たち。勇壮な楽曲が、暴れたい衝動へ気持ちを震い立たせていく。終わりを見せない暴れゆく熱狂の煽りのやり取りが、互いの熱したい欲求を示していた。
「これからも共に荒波を乗り越えていこう」。巨大なフラッグを振りかざしASAGIが宣誓の歌を響かせた。『Night-ship"D”』に合わせ、場内中に揺らめく無数の小さなフラッグたち。どんな荒波さえも、どんな障壁だろうと、この一体化した想いがあれば何時だって乗り越えていける。互いにそう誓いを立てるよう『Night-ship"D”』が黒い熱狂のうねりを場内に作りあげていった。
最後は、ふたたび会場中へ未来へ繋がる光を降り注ぐように、Dは軽やかで華やかな『時空航海記~光の彼方へ~』を届けてくれた。夢が花開くように、場内には無数の手の花が咲き続けていた。光が時空を越えるのなら、彼らが届けた想いも未来へ繋がっていくはず。そのきらめきを信じて一緒に光へ飛び乗ればいい。そんな素敵な気持ちへ彼らが連れだしてくれた。それが、何よりも嬉しかった。「これからも共に旅を続けようではないか」、ASAGIのその言葉を信じて共にズッとズッと旅を続けたい。

もう何も迷わない このすべて捧げよう 何時までも何時までも とめどなく…。

止まない熱狂。その声を受け、彼らは舞台へ戻ってきた。「この愛の真実をプライドに賭けて証明していこう。共に闇の向こうへ行こうないいか!!」。情熱的に胸を掻きむしる『Pride』の登場だ。あふれんばかりの想いを詰め込んだ哀愁を帯びた歌が、身体をザクザクと切り刻むソリッドな演奏が、心を嬉しく騒がせてゆく。歌に酔う。その感覚を『Pride』は何時も教えてくれる。場内へ咲き続けるたくさんの手の花たちは、Dから受け取った情熱によって開いた花弁たちだ。
身体を、気持ちを嬉しく躍動するように『EDEN』が響きだした。誰もがこの歌に、ASAGIの声に、愛の力を注ぐ『EDEN』に想いを捧げ続けていた。終盤では、ASAGIとファンたちのとの歌のエールが交わされてゆく。「もう何も迷わない このすべて捧げよう 何時までも何時までも とめどなく」。歌を通して互いを抱きしめながら、誰もがここに魂を開放し共に愛し愛され合う、純粋な愛を信じていられる楽園を見ていた。 

心に疼きを覚えたとき、ふたたびこの本を手にしてもらいたい。

満員のファンたちの声を受け、Dは三度目のアンコールの声に応えるよう舞台へ姿を現した。「物語の結末はお前たちの手に委ねた。お前たちが闇の中から光を掴んでくれ。闇に溺れそうになったら何時だって俺たちが手を差し伸べるから。一緒に光へ向かって突き進もう」(ASAGI)
最後の最後にDは、アリスの物語を華やかに締め括るように『闇の国のアリス』を届けてくれた。誰もが熱狂に溺れていた。その歌を心の道標に据えながら、この物語を消えない記憶の血として身体中へ巡らせるよう、滾る想いを抱きながら舞台上へ想いを捧げていた。

アリスの物語は、この日で物語のページを閉じていった。そしてDは、新たな真っ白な本を取り出し、これから新しい物語を綴りだす。その未来も楽しみだが、ここまで綴ってきたアリスの物語も、ぜひ大切に胸にしまっていて欲しい。そして、心に疼きを覚えたとき、ふたたびこの本を手にしてもらえたら幸いだ。
Text : 長澤智典 Photography:TAKUYA ORITA  





2017.01.27 D TOUR 2016 冬ツアー「Wonderland Savior ~月の歯車~」-Grand Final- @ 新宿ReNY
-SET LIST-

-Dream in Dream-
-SE-
01. Underground Revolution~反逆の旋律(メロディー)~
02. シュレディンガーの夢遊猫(むゆうびょう)とジャッカロープの杖
03. Keep a secret~帽子屋の憂鬱~
04. 海王鯨島 亀毛海浜夢珠工場(かいおうくじらとう きもうかいひんゆめたまこうじょう)
05. Rosarium
06. Egg Supermacism
07. HAPPY UNBIRTHDAY
08. 月影の自鳴琴(オルゴール)
09. Alice
-Dr solo&リズムセッション-
10. Psychedelic Horror Show
11. フューシャピンクとフランボワーズの鍵盤
12. MASTER KEY
13. Wonderland Savior~太陽と月の歯車~
14. 黒薔薇の騎士
15. 水たまりの空~ドードー飛行記~
16. 七色革命
<ENCORE 1>
01. Guardian
02. Night-ship"D”
03. 時空航海記~光の彼方へ~

<ENCORE 2>
01. Pride
02. EDEN

<ENCORE 3>
01. 闇の国のアリス

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