2017.04.23 D 14th Anniversary Special Premium“Free”Live @ Zepp Tokyo
2016.05.25

結成14周年を迎えた2017年4月、Dはバンド史上初の試みとして、フリーライヴを敢行した。しかも会場はライヴハウス最大級キャパのZepp Tokyo!より多くのオーディエンスに今のDを届けたいという想いを胸にステージに立った5人は、この日のコンセプトでもある“過去・今・未来”を見事に融合させた。それは、揺るぎない“現在”があるバンドだからこそできる表現でありライヴアクトだったと、ライヴを見終わった今、はっきりと言い切れる。

メンバーがステージに姿を現わす直前、ステージ上のスクリーンには、6月28日に発売するニューシングルのタイトル曲『Dark fairy tale』のミュージックビデオが映し出された。2015年夏の活動再開後から展開してきたアリスの世界観に続くニューコンセプトがいよいよお披露目されたのだ。そして、MV上映後にステージの幕が開いてメンバーが一人ずつ登場……演奏が始まるまで10分ほどをかけたオープニングを展開。否応なしに会場の期待感が高まったところで、Zepp公演の幕は切って落とされた。
Dの象徴である“薔薇”をテーマにした『7th Rose』から始まった前半は、インディーズ時代からのDの代名詞といえる楽曲を織り交ぜながら一気に会場をヒートアップさせていくセットリスト。特に3曲目の『闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア』では、Dの真骨頂ともいえる爆発する疾走感と圧倒的な迫力がこもった演奏に場内の観客たちが激しいヘドバンで応えるという、ステージとオーディエンスの熱いぶつかり合いが早くも見られた。その後演奏された『Night-ship“D”』も同様で、場内が旗で埋め尽くされるかのような壮観な光景が広がる。14年の活動の中で、“Dといえばこの曲”という、いわゆる代表曲と呼ばれる楽曲をいくつも生み出してきたバンドならではの重みのある景色だ。
そんな今日のセットリストについて、7曲目の『三角お屋根と哀れな小熊』の演奏を終えたあとのMCで、ASAGIがこう語った。

ASAGI:Zepp Tokyoでワンマンライヴをするのはなんと10年ぶりです。10年前はメジャー発表をした頃なんだけど、変わってないだろう。ま、ヴァンパイアだからな。ハッハッハ。今度は妖精か。どちらも永遠を彷徨う種族だからな。フッフッフ。今日は、過去・今・未来を感じさせるライヴをしたいと思う。そして今日のこのワンマンを通して、それぞれのメンバーがDとして初めて作った曲を披露していきたいと思います。ではまずは、私がDとして初めて作った曲を。すべてはここから始まった。ここで太陽に焼かれよう……『Vampire Missa』。


古くからのファンもたくさん駆けつけているであろう場内からは、『Vampaire Missa』の曲紹介がされると感嘆の声が上がる。続く『花惑』も初期からの楽曲だけれど、メジャーデビュー以降の新しい楽曲と並べて聴いてもまるで違和感がない。同じバンドが演奏しているのだから当たり前かもしれないが、初期に発表したインディーズ時代の曲をあまり演奏しなくなるバンドも少なくない中、こういったセットリストが組めるのは、長い年月を経てもバンドの芯がまったくブレていないからなのだと思う。次に演奏された“メンバーがDとして初めて作った曲”はRuiza作曲の『Lost breath』。初期の頃からライヴを大いに盛り上げる曲のひとつであるこちらも、客席がヘドバンでステージの演奏に応える姿が壮観だった。この曲のコールアンドレスポンスで、ステージと客席が互いの熱量を高め合うシーンはこれまでのライヴで何度も見ているが、やはり大きな会場で大人数のオーディエンスが頭を振り、拳を振り上げる様は圧巻だ。
このあと、HIROKIを残し、メンバー4人は一旦ステージを後にする。ドラムソロの中で「声出せるか!かかってこい!」と叫ぶHIROKIはDの屋台骨を支えるパワフルなビートで中盤の見せ場を作っていく。そして、HIDE-ZOU、Tsunehito、Ruizaの順にメンバーがステージに再び姿を表し、ライヴはいよいよ後半戦へ。最後に登場したASAGIが「後半、トバしていくぞ!」と気合入れをし、次の曲を紹介する。ASAGIとともにHIROKIが初めて曲作りに挑戦した『Dessert Warrior』だ。続く『In the name of justice』『鬨の声』で疾走感あふれる空間を作り出したあと、ASAGIが再びメッセージを発した。このレポートの最初の方で、“長い年月を経てもバンドの芯がまったくブレていないからなのだと思う”と記したが、まさにそれを再実感させる言葉。
ASAGIは、Dのこれまでの歩みを“自分が信じる道を貫いてきた”と言い表した。


ASAGI:Dは結成が2003年なんだけど、そこからわずか2年、2005年に自ら会社を立ち上げて、法人・GOD CHILD RECORDSとして活動してきました。当時の日本ではまだ珍しいスタンスだったと思うけど、自らの道を切り拓いてきたからこそ今のDがあると思います。次の曲は、“自分の信じる道を貫く”──そんな想いを込めた曲を聴いてくれ。

この話を受けて演奏されたのは『GOD’S CHILD』。2005年9月に発売された1stアルバム『The name of the Rose』に収録されているこの曲を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れない。曲を聴いて“感動する”という感覚を超越した“打たれる”という経験。音源はもちろん、ライヴでもCDで聴く以上の凄みを毎回感じさせるバンドの熱量と技量、ASAGIというヴォーカリストの歌唱力を超越した命を削るかのような表現力にただただ驚いた。あれから12年が経つが、この曲を聴くたびに鳥肌が立つ感覚は今でもまったく変わらない。
そんな、圧巻の世界観を目の前に叩きつける『GOD’S CHILD』に続くのは、HIDE-ZOUが初めてDで作曲をした『君が見る夢の中』。HIDE-ZOUらしい優しい雰囲気が、それまで場内を支配してきた重厚なムードを一変させる。と思いきや、TsunehitoがDとして初めて手がけた『Leukocyte』では、ズッシリとした重たさのある世界観を突きつける。メンバーそれぞれが持つ個性や持ち味が生きたセットリストを通し、軸こそブレないものの、14年にわたって様々な世界観を表現し続けてきたDの懐の広さを改めて感じることができた。
そして最後は、発売前のニューシングルのタイトル曲『Dark fairy tale』。
ライヴで度々登場している、通称“教官”(HIDE-ZOU)によるフリの実演で場内に笑いが起こったあと、本邦初となる実演奏が始まった。この日のライヴにはDを好きになってまだ日が浅い私の知人も参加していたのだが、彼女がとても印象深いことをライヴ後に言っていた。「Dが紡いできた14年の歴史に追いつくにはまだまだ時間がかかるし、実際、今日も初めて聴く曲がたくさんあった。でも、最後に『Dark fairy tale』を聴くことができて、ここからまた新しい歴史をDと一緒に歩んでいけるんだと思ったらとてもうれしかった」と。“過去・今・未来”をつないできたライヴの意味が、全曲を通して実を結んだのがこの瞬間だったのかもしれない。どの時期からDに触れた人でも、誰に遠慮することなく、これからもずっと一緒に歩んでいける未来を確かに感じられる余韻を残し、本編は終了した。



アンコールでの演奏に入る前には、メンバーからのメッセージが。一人一人のキャラクターがよく表れた話が満載だったので、全文を掲載しようと思う。

 
ASAGI:今日、いろんなことを思い出しながら歌っています。ここに来てくれたみんなの中にも、最初から来てくれてる人、途中からの人、今日初めて来てくれてる人もいるのかな……?こうして今日集まってくれてるみんなと今日という日を迎えることができてうれしいです。ここにいるみんなの人生の思い出の一部になっていることが本当にうれしいし、自分たちの人生、思い出の一部にもみんながいてくれていることが本当に幸せです。だからこれからも、一緒に同じ時を刻もうね。
HIDE-ZOU:フリーライヴは初めてなんですけど、こんなにたくさんのみなさんが集まってくれてうれしく思います。今まで支えてきてくれた子たち、今日初めての子たちもいると思うんですけど……初めての子たちに。Dはこんな感じのバンドです!(←Tsunehitoが苦笑) 楽しいでしょ?楽しいよね!?っていうわけでね、みなさんこれからもよろしくお願いします。『Dark fairy tale』のリリースが発表になりましたけど、聴いてくれてわかると思うけど、すげーカッコイイです。MVも冒頭で観れたと思うけど、期待しててください。ねえ!?俺たちDは、すげえカッコイイよな!!
Tsunehito:D史上初のフリーライヴということで、本当にめちゃくちゃ気合を入れて楽しみにしてきました。新旧織り交ぜた曲をたくさんやって、うれしいという気持ちと楽しいという気持ちが入り混じって本当に幸せです。どの時期の曲も、演奏していてカッコイイ曲だなと自分でも思えるし、みんなに届けられることがうれしい。新曲のMVと曲を披露することもできましたし、新曲というものをどんどんみんなに聴いてもらえることもうれしいです。15周年に向けてもっともっと気合を入れていこうと思うのでこれからもよろしくお願いします!HIDE-ZOUさんが“こんなバンドでーす!”って言ったけど、これだけじゃねえからな!おい、HIDE-ZOU!これだけじゃねえぞっ!(笑) ニューシングルはカップリング曲もあるし、じっくり聴いてもらえたらさらに新しい発見があったり楽しんでもらえると思います。夏ツアーもあるのでぜひぜひ集まってほしいな。これから ついてこいよ!
HIROKI:活動してきた 14年の歴史を感じられる楽曲が目白押しだったわけですけど、こうして14周年を迎えられたのは今まで支えてくれたみんなのおかげですし、今日初めて見るという人も多いと思うんですけど、今日は新曲も披露させてもらいましたが、僕たちは更に進化していくと思いますし、こうして出会ったみんなに、これからも素晴らしい楽曲を届けたいと思っています!“元気と勇気とHIROKI”。これ、今日来てくれたみんなは忘れないようにね!
ASAGI&Ruiza:おもしろい!(笑)
Tsunehito:それ昨日から考えてたでしょ!
HIROKI:シッ!(笑)これからもずっと一緒に共に歩んでいけたらと思います!
Ruiza:アンコールありがとうございます!最高に楽しく熱い時間がみんなと作れているんじゃないかと思います。今までいろんな活動をしてきまして、今日で14周年。そして15年目に入るD。すごいですね!自分で言うのもなんですけど、カッコイイなってやっぱり思うんですよね。今日は『Dark fairy tale』のMVを最初に見てもらいましたけど、我々もリハーサルの時に見てたんですよね。そうしたらやっぱり、すごくカッコよくて!15年目、最高の作品をリリースして活動を続けていきたいです。関係者の方々、そして皆からたくさんの力をもらってここまでやってこれたので、これから先もどんどんカッコイイ活動をして返していけるよう頑張っていきますので、よろしくお願いします!



アンコールで披露したのは、現メンバーになって初めてMVを撮影した『太陽を葬る日』、昨年秋にリリースしたフルアルバムのタイトル曲『Wonderland Savior ~太陽と月の歯車~』。そして……「Zepp Tokyoでメジャー発表をした時の熱い想いは今も変わっていません」というASAGIの言葉を受けて演奏された『Pride』。『Wonderland Savior ~太陽と月の歯車~』では、「全員で歌いましょう」とASAGIが観客に語りかけ、両手を広げて、まるで自分の世界に招き入れるかのような包容力でオーディエンスの声を導いていくシーンが印象的だった。
続く2度目のアンコールでは、「全員で飛ぶぞ!」というASAGIの掛け声でフロアが揺れた『Dearest you』、そして『EDEN』の2曲をまず披露。『EDEN』でもASAGIは、「もっと(みんなの声を)聴かせてください」とマイクを客席に向け、オーディエンスの声を誘う。この会場に集まった全員で歌い上げられた『EDEN』は、ステージ上の5人の胸を打ったに違いない。そして、オーラスは『春の宴』。命の尊さを多くの歌詞に綴っているASAGIならではの、命溢れる自然に対するメッセージが詰まった楽曲は、未来へ向かうこの日のライヴの最後にとてもふさわしい。ASAGIは「春は出会いと別れの季節だけど、またこうして何度でも一緒に春を迎えましょう」と言ってこの曲を歌い上げ、Dの歴史に残るフリーライヴを締めくくった。
アンコール前のMCで、ASAGIは、「今日はいろんなことを思い出しながら歌っています」と話していたが、今日この日のこともきっと、どれだけ時が経とうと、色あせない思い出として彼の胸に残るだろう。その想いを胸に、Dは、活動15年目の新たな航海へと進んでいく──。


Text : 須田真希子 Photography : TAKUYA ORITA  


2017.04.23 D 14th Anniversary Special Premium“Free”Live @ Zepp Tokyo
-SET LIST-

-MV 上映-
-SE-
01.7th Rose~Return to Zero~
02.7th Rose 
03.闇の国のアリス
04.闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア
05.光の庭
06.名もなき森の夢語り
07.Night-ship”D”
08.花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~
09.三角お屋根と哀れな小熊
10.Vampire Missa
11.花惑
12.Lost breath 
-Dr solo-
13.Desert Warrior
14.In the name of justice
15.鬨の声
16.GOD'S CHILD
17.君が見る夢の中
18.Leukocyte
19.黒薔薇の騎士
20.Dark fairy tale
<ENCORE 1>
01.太陽を葬る日
02.Wonderland Savior~太陽と月の歯車~
03.Pride

<ENCORE 2>
01.Dearest you
02.EDEN
03.春の宴
-エンディングSE-
-ライヴスケジュール上映-

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