2018.03.24 浅葱 全国単独公演 二〇十八 「斑(まだら)」 千秋楽 @ 新宿BLAZE
2018.05.23

浅葱、記念すべき初のソロツアー、見事完結!
『斑』の世界観をあますところなく描いた完結編=新宿BLAZE千秋楽公演の模様を詳細レポートする。


2016年春にソロシングル「Seventh Sense/屍の王者/アンプサイ」でソロ・メジャーデビューを果たしたDのヴォーカリスト・ASAGI。ASAGIのソロワークスの始まりは、遡ること今から12年前、2006年秋に自主レーベル“GOD CHILD RECORDS”よりリリースしたシングル「Corvinus」だった。そもそもソロでの活動を始めたのは、「Dで表現しきれない世界観を表に出したい」という欲求があってのこと。Dでは使わないチューニング法にトライしてみたい、ならばソロでやってみようという動機がキッカケだったと聞く。しかしその後、ASAGIがソロ試したチューニングはDでも取り入れられるようになり、彼のソロワークスがDの音楽の幅を広げることになった。それからしばらく音沙汰のなかったソロワークスだったが、「Seventh Sense/屍の王者/アンプサイ」をきっかけに再始動。今年1月には、ソロ名義を“浅葱”とし、和世界をコンセプトとしたフルアルバム『斑』を発表した。そして、この作品を提げ、ソロワークス始動から12年目にして初の全国ツアーを決行することに。バンドのヴォーカリストがソロで動くことにはリスクも伴うと思う。特にDは10年以上シーンの最前線を走っているバンドであり、ファンが持つイメージは良い意味で固まってきている。それを、ヴォーカリストがソロで動くことで崩すことになる場合もないとは言えない。しかし、ツアーを終えた今、そんな心配事は杞憂だったことに気づく。浅葱は見事、Dのヴォーカリストという立場を崩すことなく、しかし、ソロアーティストとして独自の世界観と音楽観を両立してみせたのだ。  今ツアーの特徴は、まずセットリスト。全公演一貫して、アルバム『斑』の収録順通りに演奏をし、アンコールなしの本編のみというかなり挑戦的な構成だった。時間にして1時間20分ほど、これは、ライヴの時間が長くなりつつある現在の音楽シーンでの傾向と逆行している。でも、どの会場でも、演奏時間の長さに関してブーイングが起こることはなく、最後の曲とともにすべてが昇華する……そんな満足感が会場を覆っていたことがとても印象深かった。それは新宿BLAZEでも同じで──

会場が暗転、「天地行き来る小船」とともにステージの幕が開くと、そこにはサポートメンバーを従え、金色色(こんじきいろ)の扇子をクルクルと回す浅葱の姿が。轟音とともに、1曲目の「月界の御子」が始まると、客席のオーディエンスたちも一緒に扇子を振ったり体を大きく揺らしたりと、浅葱が放つ『斑』の世界観に一気に引き込まれていく様子を見せる。続く「畏き海へ帰りゃんせ」では、たっぷりとした息遣いで綴られる幻想的な楽曲に身を委ねるように聴き入り……3曲目の「花雲の乱」で再び轟音が響き渡ると拳を挙げて浅葱に応える。“和”というコンセプトが軸にあるとはいえ、たった3曲で懐の広い音楽性と世界観を見せつける。般若の面を手に、“桜の季節がやってきた。桜を見るとあの日を思い出し、今も胸が苦しくなる”と浅葱が短いセリフを語ったあとに演奏が始まった「隠桜」では、バックのスクリーンに夜桜の光景を映し出しながらの演奏。途中、桜が炎に包まれる様や激しい雨が降る模様を映し出しながら、楽曲が持つ激しさをステージの上で再現していく。


この日も他公演と同じく、ステージには和庭園を彷彿とさせるセットが組まれ、和の世界観を具現化しているが、セットだけでこの重厚な雰囲気は成り立たない。浅葱が作り出す楽曲にたしかな世界観とパワーがあるからこそ、ライヴハウスという空間が『斑』の持つ様々な色彩に染められていくのだろう。「隠桜」が終わり、浅葱がマイクを取る。 「浅葱単独公演『斑』千秋楽に集まりし皆の者、心より感謝致す。サポートメンバーの黒兎達とスタッフ、其方らと各地を巡って最高のツアーになって誠に嬉しい。我は幸せ者よ。さあ、今宵は千秋楽、全力で盛り上げようぞ!」そして、「次は儚い人生の中で懸命に輝こうとする曲です」という曲紹介に続いて披露されたのは、琴の音色から始まる「蛍火」。炎ゆらめく中、金色のセンスを振りながら妖艶に歌い舞う浅葱。中盤の彼は、「大豺嶽~月夜に吠ゆ~」では激情的に、「冬椿~白妙の化人~」ではしっとりと深く……といったように、まるで自身が生み出した楽曲に身体を乗っ取られているかのようにストーリーテリングしているように映った。その圧倒的なステージ運びに、客席が固唾を飲んで見守る場面も……。かと思えば、8曲目の「白面金毛九尾の狐火玉」では、狐のお面を手に「今宵、どんな旅人がこの屋敷に迷い込むのか楽しみじゃのう!さあさあ宴じゃ!皆の者、良い声で鳴けるか?」と客席に呼びかけ、楽しげに飛び跳ねるコミカルなシーンも。ここでは、それまで淡々と演奏に徹していたサポートメンバーたちも、楽しげな表情を見せる。ギターのHIDE-ZOUとMiAは、琴の音色が絡む軽快なサウンドに乗ってジャンプしながら手を叩いて客席を煽ったりも。こんな遊び心は、常にファンを楽しませたいと願う浅葱ならではだ。と思えば、舞台の景色は一転、雷鳴轟く映像をバックに、この日一番の激しさを見せた「鬼眼羅」では、ロックと和の融合による鬼気迫るサウンドと世界観で会場を圧倒、フロアの熱気は最高潮に!この曲の途中では、全国各地を共に行脚してきた黒兎達(サポートメンバー)の紹介がてらのソロ回しも挟む。ドラム・HIROKIは自己紹介代わりのドラムソロで華麗なスティックさばきを、ベース・亜季は赤い傘を手に正面のお立ち台に上がって男らしい佇まいを、それぞれ見せる。ギター・HIDE-ZOUは自己アピールするタイミングを誤って笑いを誘う“らしさ”を見せつつ「かかってこいよー!」と客席を煽り、ギター・MiAが華麗な早弾きで腕利きぶりを披露すると、浅葱が何度もMiAの演奏を促すというちょっぴり微笑ましいやりとりも。二度目のソロ回しでHIDE-ZOUのギターがトラブルを起こした時には、座り込んで調整する彼を亜季が広げた傘で隠しつつ、浅葱が「よし、HIDEさんには途中から参加してもらおう。ははは!」と……トラブルに慌てるでもなく、その状況を楽しむ余裕さえ感じるステージ運びを見せた。このメンバー間の連携は、全国をともに駆け抜けた上で培った信頼関係あってこそ。こから、HIDE-ZOUのギターが復調するまで、しばらく長い間のコールアンドレスポンスが続くが、ダレることはまったくなく、むしろこれを怪我の功名としてこの日最大の盛り上がりへと導いていく。やがてHIDE-ZOUが無事復活、絶好調のギターソロをお披露目して「鬼目羅」は終演。そして、セットリストは残すところ4曲、終盤へと突入する──。


「雲の通ひ路」ではゆったりとした浮遊感の漂う歌を、その名の通り妖艶さを感じさせる音階の「妖刀玉兎」では歌舞伎のセリフ回しのような独特の歌い回しを聴かせてを聴かせ、クライマックスへと導いていく浅葱。「さて、月界の御子である我は、月から降り立ち、この愛しき地球を守るため、昼は和菓子屋を営み兎饅頭を作り、雷おこしも作り、芋羊羹も作り、最近はハイカラに東京バナナも作っておる。そして夜は妖怪退治をしておるわけだが、ここ東京にも様々な妖怪がいる。今宵は縊鬼(いつき)という悪い妖怪が現れたらしい。今からその縊鬼を倒しに行くゆえ、其方らの愛で我に力を」との、ユーモアを織り交ぜた語りで笑いを誘いながら、「物の怪草子」の世界へと足を踏み入れていく。
そしてついにラスト──。「アサギマダラ」の演奏に入る前、浅葱はこんなメッセージを残した。 「この世に生を受け、毒を食み、仲間と共に羽ばたいてきた愛しき我が旅路も今宵、最期を遂げようとしている。たとえこの身が朽ち果てようとも、我が心が死すことなど決してないのだ。さあ行け、別れは言わぬ。だが案ずるな。最期の力を振り絞り、事を為した暁には、我の心もそなたらの元へと追いつこう。そしてまた、いつまでもどこまでも、共に斑の空をひらめこうぞ──」 ここまで、様々な楽曲とともに『斑』の世界観を生で表現してきた浅葱が、一番伝えたかったことがこの言葉に集約されている。


浅葱が持つ人生観や死生観、過去を愛でる懐の深い優しさ、未来を見つめる慈悲深い眼差し、すべての生きとし生ける者を愛する心は、Dでもソロワークスでも変わらず表現されている。この心があるからこそ、Dであろうとソロであろうと何かがブレることがないのだと、最後の最後のこの場面で確信できた気がする。この、ずっしりと根付く彼の精神性があったうえで多方面に枝分かれしていく世界観や音楽性はひとつの手法では伝えきれないから、バンド、ソロ、いろいろな形が生きてくるのだと。6月1日にはCLUB CITTA’でイベント出演、9月24日には恵比寿リキッドルームでの単独公演が決まっている浅葱ソロワークス。結成15周年を迎えたDとしては、7月から夏のツアーが始まるが、ここで得た手応えを持ってソロワークスのステージに再び立つ時、どんな羽ばたきを見せてもらえるのか、それがとても楽しみだ。

TEXT:須田真希子  PHOTO:TAKUYA ORITA  


2018.03.24 浅葱 全国単独公演 二〇十八 「斑(まだら)」 千秋楽 @ 新宿BLAZE
-SET LIST-

-SE(天地(あめつち)行き来る小船)-
01. 月界の御子
02. 畏き海へ帰りゃんせ
03. 花雲の乱
04. 隠桜(おぬざくら)
05. 螢火
06. 大豺嶽(おおやまいぬだけ)~月夜(つくよ)に吠ゆ~
07. 冬椿 ~白妙の化人~
08. 白面金毛九尾の狐火玉
09. 鬼眼羅(きめら)
10. 雲の通ひ路
11. 妖刀玉兎
12. 物の怪草子
13. アサギマダラ



◆”浅葱 " 出演決定!!
Japanese Rock Evolution!! / Live battle vol.1 club cotta kawasaki

6月1日(金) CLUB CITTA'
【出演】浅葱 / 戦国時代-The age of civil wars- / 己龍
【チケット料金】スタンディング ¥4,800 / DRINK代別

<サポートメンバー>
Gt.HIDE-ZOU (D)
Gt.MiA (MEJIBRAY)
Ba.亜季 (Sadie / AXESSORY)
Dr.HIROKI (D)

★一般チケット発売中!
チケットぴあ (Pコード:115-819) 0570-02-9999 http://t.pia.jp
ローソンチケット (Lコード:76081) 0570-084-003 http://l-tike.com
イープラス (4/28~) http://eplus.jp
Yahoo!チケット (4/28~) https://ticket.yahoo.co.jp
問い合わせ先 : CLUB CITTA’ 044-246-8888 (平日12:00~19:00)


◆ASAGI solo works "浅葱" 「斑~白面金毛九尾の狐火玉編~」
2018/9/24(月・祝) 恵比寿LIQUIDROOM
OPEN/START 17:00/17:30
【チケット料金】 スタンディング¥4,800(税込) / DRINK代別

・限定グッズ付きプレミアムチケット有り。[FC先行のみ受付]¥9,999(税込)/DRINK代別
※限定グッズは後日発表となります。予め、ご了承ください。
※限定グッズの引き換えに関しましては、公演当日、入場時に引換券をお渡しいたしますので、終演後引き換え窓口までお越しください。

※3歳以上チケット必要

【一般発売日】 6/30(土)~

【ファンクラブUltimate lover会員先行】
※5月11日時点でD official Fan club「Ultimate lover」に入会されている方対象
◎受付期間:5/21(月)12:00~5/31(木)23:59
◎受付URL:http://pia.jp/v/asagi18fc/ ※PC/モバイル共通
◎枚数制限:お1人様4枚までお申込可(プレミアムチケットはお一人様2枚まで)
◎当落結果発表:6/2(土)18:00頃~
◎入金期間:6/2(土)18:00頃~6/5(火)23:59
※お申込画面を確認の上、上記日程までにエントリー下さい。
※お申込は抽選となります。

【オフィシャルHP先行】
◎受付期間:6/1(金)12:00~6/10(日)23:59
◎受付URL:http://w.pia.jp/s/asagi18hp/ ※PC/モバイル共通
◎枚数制限:お1人様4枚までお申込可
◎当落結果発表:6/12(火)18:00頃~
◎入金期間:6/12(火)18:00頃~6/15(金)23:59
※お申込画面を確認の上、上記日程までにエントリー下さい。
※お申込は抽選受付となります。

【入場順】
FC先行プレミアムチケット(Pチケット)~FC先行チケット(Aチケット)~HP先行チケット(Bチケット)~一般チケット(Cチケット)


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